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生き延びた人々の苦難 広島各局8・6特番 

RCCテレビ 元原爆孤児が似島再訪

テレビ新広島 核禁止条約 訴える姿

 原爆投下から72年目の夏を迎え、広島県内の放送各局はさまざまな視点から「8月6日」を伝える特別番組を放送する。前文に「ヒバクシャ」の文言を盛り込んだ核兵器禁止条約が採択された今年。惨禍を生き延びた人々の苦難をクローズアップする番組が目立つ。(西村文)

■テレビ

 RCCテレビが8月6日午前10時44分から放送する「似島の少年」は、ある「原爆孤児」が歩んだ人生と広島の復興史をたどる。8歳で家族と引き裂かれ、児童養護施設の似島学園(広島市南区)で育った男性。80歳となって久しぶりに似島を訪れ、見た景色は―。

 NHK広島放送局は、被爆者と高校生の交流を描くドラマ「ふたりのキャンバス」を制作。中国地方向けに1日午後7時半から、さらに5日午後3時5分から全国放送する。被爆体験を聞き取って絵画化する基町高(中区)の取り組みがモデルで、出演は近藤正臣ら。6日午後9時からの「原爆死ホットスポット~ビッグデータで迫る72年目の真実」は、最新の解析技術で被爆の実態に迫る。

 テレビ新広島は6日午後2時からの「わしらの声は、届くかのお~被爆者75歳 NYへ行く」で、県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長に密着。核兵器禁止条約の会議に合わせて米ニューヨークを訪れ、各国の政府代表に核の脅威を懸命に訴える姿を追う。

 広島テレビは7日午前0時55分(6日深夜)から「4400人が暮らした町~吉川晃司の原点ヒロシマ平和公園」を放送。原爆投下前、父の実家が現在の原爆ドーム(同)対岸にあったという歌手の吉川晃司が、消えた町並みと人々の暮らしを遺品などからたどる。

 広島ホームテレビは1日午前2時25分(7月31日深夜)から「爆心地を語る~78人の証言テープ」で、広島大原爆放射線医科学研究所(南区)に保管されてきた証言テープを取り上げる。爆心地から500メートル内で生き残った78人の生々しい体験談をひもとき、被爆者本人や家族、遺族の思いを伝える。

■ラジオ

 RCCラジオは6日午前8時40分から「新里カオリのうららか日曜日~被爆72年『戦後』はいつまで続くのか」を放送する。詩人のアーサー・ビナードさんとアニメーション映画「この世界の片隅に」の片渕須直監督が「戦争をどう捉え、どう伝えていくか」をテーマに語る。

 NHKラジオ第1は9日午後8時5分からの「原爆の惨禍を生き抜いて~知られざる“原爆孤児”」で、爆心地に近い袋町国民学校から集団疎開した級友の同窓会を取材。広島を離れて生き残った彼らの人生を追い、原爆の惨禍を浮き彫りにする。

 広島エフエムは6日午後7時から「祈りの川」と題して、灯籠流しが行われる中区の元安川から生中継。祈りの風景を音で伝えるほか、被爆者へのインタビューなどを交え、鎮魂のメッセージを発信する。

    ◇

 広島テレビは6日から、過去に放送した「チンチン電車と女学生」(2003年)など原爆や平和関連の番組6本の英語版をホームページ上で無料配信する。「いしぶみ」(15年)は9月5日まで、ほか5本は来年3月末まで。米紙ニューヨーク・タイムズの5日付朝刊に、番組の告知と平和を希求するメッセージを広告として掲載する。

(2017年7月29日朝刊掲載)

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