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社説・コラム

社説 北朝鮮再びICBM 日米韓の連携再構築を

 北朝鮮が28日深夜、またしても大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した。今月4日に続き、日本の排他的経済水域(EEZ)に落下させた。北海道・奥尻島まで、あと約150キロというから脅威である。

 通告もなく、EEZに平然と撃ち込む挑発行為で、人命を危険にさらす。国連決議に背いて繰り返される暴挙を、断じて許すことはできない。

 国営放送は前回同様、「火星14」の発射に成功したと報じた。高く打ち上げて飛距離を抑えるロフテッド軌道による発射も同じだ。ただ、米国の専門家によると、通常軌道なら射程は1万キロを超え、米中西部シカゴに届く可能性がある。

 それを裏付けるように、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長も「米本土全域がわれわれの射程圏内にあるということがはっきりと立証された」と強調したという。

 直線距離で射程1万キロといえば、西は欧州のほぼ全域、南はオーストラリアも入る。同国やフランスは早速、発射を強く非難する声明を出し、国連安全保障理事会にも強い対応を求めた。フランスは、欧州連合(EU)としての独自制裁も促している。いずれも危機感が強まっている表れだろう。

 「最も強い言葉で非難する」と安倍晋三首相は述べた。北朝鮮の挑発が続く限り、「米国、韓国をはじめ、中国、ロシアなど国際社会と緊密に連携し、さらに圧力を強化していく」と語った。当然のことだろう。

 今回の発射地点では、これまで長距離ミサイルが発射されたことがなかった。しかも、真夜中である。奇襲能力を見せつけたかったのかもしれない。同時に、包囲網を敷く日米韓の連携に隙を見て取り、付け込んだとはいえないか。

 日本は、陸上自衛隊の南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報を巡る問題で、防衛相の座から稲田朋美氏が引き、岸田文雄外相の兼務が決まったばかりである。

 ナンバー2の事務次官も交代し、陸上幕僚長も来月8日付での退職が決まっている。混乱が落ち着いたとはまだ言えず、政府は体制を早急に立て直す必要がある。

 不意を突かれたのは、韓国も変わるまい。文在寅(ムン・ジェイン)政権は北朝鮮に対し、日米との連携で「最大限の圧力」をかけることに合意する一方で、南北会談の可能性を模索していた。

 米国も、半年を迎えたトランプ政権で辞任や解任が相次ぐ。28日もトランプ大統領は、大統領首席補佐官の更迭をツイッターで明らかにした。日本の官房長官になぞらえられる首席補佐官の交代は、政権内部の混乱の象徴といえよう。対北朝鮮政策にしても、頼りの中国も腰が重いままで、手詰まり状態だ。

 弾道ミサイルの発射をやめない北朝鮮への制裁履行を巡り、日米韓と中ロが対立を深めている現状は、北朝鮮を利するだけで、制裁の効果を弱める。

 ミサイルで米国との交渉を有利に進めようとする北朝鮮に、このまま振り回されるわけにはいかない。

 日米韓はいま一度、連携を再構築すべきである。北朝鮮情報の共有は無論、さらなる制裁強化も進めねばならない。国際社会と結束し、暴挙を封じ込めていくほかあるまい。

(2017年7月30日朝刊掲載)

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