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社説・コラム

核兵器禁止条約の対応 被団協の田中代表委員に聞く

不支持の日本 情けない 核の傘離れ批准すべき

 日本被団協代表委員の田中熙巳氏(85)が、23日に講演した山口市で中国新聞のインタビューに応じ、7日に国連交渉会議で採択された核兵器禁止条約を支持しないとする日本政府の対応を「本当に情けない」と批判した。同被団協は28日、同条約への批准を求める安倍晋三首相(山口4区)宛ての要請書を提出。核兵器廃絶を求める「ヒバクシャ国際署名」に関し、「核兵器は多くの人がいらないと思っている。政府に核抑止力政策から抜ける決意をさせる力にしたい」と賛同を呼び掛けた。(折口慎一郎)

  ―条約を支持しない政府の判断をどう思いますか。
 本当に情けないし、悔しい。採択に向け一生懸命頑張った国々に申し訳ない。条約では核兵器の開発、保有などを違法とし、「核兵器を使用する」との威嚇も禁じた。核保有国は抑止力で安全保障を保っており、日本は米国の「核の傘」の一員だ。政府は「傘」を離れ、唯一の被爆国として条約に批准するべきだ。

  ―国際署名は昨年4月にスタート。広島、鳥取両県知事たち15府県知事(24日現在)が署名した一方、山口県知事は署名しない意向を示しています。
 県の判断が国の政策と同じでなくてよい。県民を代表する立場として「条約を通して核兵器をなくすべきだ」と言えばいい。安倍首相のお膝元で、どこか顔色をうかがっている。政府の中でも岸田文雄外相兼防衛相(広島1区)は、首相とは考えが違うはずだ。被爆地・広島選出の外相として、交渉会議に不参加なら辞任するぐらいの覚悟を見せるべきだった。

  ―今後の取り組みは。
 国際署名は被爆者が呼び掛け人となり、幅広い協力を得ようと政治的イデオロギーを極力排除した。「核兵器はいらない」との純粋な思いがあれば協力してほしい。署名した人が次の誰かへつなぐ活動にしたい。安倍首相にも署名を求める。

たなか・てるみ
 1932年、旧満州(中国東北部)生まれ。両親の出身地である長崎に移り、13歳の時に爆心地から3・2キロの自宅で被爆した。東京理科大を卒業後、東北大工学部助教授などを歴任。日本被団協の事務局長を計20年間務め、今年6月から現職。

(2017年7月31日朝刊掲載)

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