×

ニュース

[変わる岩国基地] 艦載機 いつ移転 容認1ヵ月 自治体やきもき

 米海兵隊岩国基地(岩国市)へ空母艦載機61機が移転する計画を巡り、山口県の村岡嗣政知事が県内自治体の最後に容認を表明して約1カ月。移転の開始時期について、国は1月に「早ければ7月以降」と県や市に伝えていたが、具体的な追加情報のないまま7月が過ぎた。いつ移転は始まるのか―。全ては米軍の運用次第となる中、地元自治体などはやきもきしている。(松本恭治、和多正憲)

 「防衛当局から艦載機移転スケジュールの具体的な情報はない。あらゆる観点から情報収集したい」。7月28日、同市の福田良彦市長は記者会見で述べた。生活への影響が見込まれる移転は市民の大きな関心事だけに、中国四国防衛局などに再三、速やかな情報提供を求めているという。

盆など自粛要請

 移転開始が8月になった場合、広島、長崎原爆の日(6、9日)や岩国駅前大空襲の日(14日)が続く。市は7月20日、岩国日米協議会の確認事項にある盆期間(13~16日)とともに、これらの日の黙とう時間の飛行自粛を岩国基地側に求めた。慰霊の日に艦載機が飛来すれば住民感情を逆なでしかねない。

 艦載機はこれまで、搭載する空母ロナルド・レーガンが母港の米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)に寄港する時期に米海軍厚木基地(同県)へ飛来。空母の寄港中、訓練などで飛行や離着陸を繰り返し、厚木基地周辺に甚大な騒音を振りまいてきた。

 岩国基地への移転時期は一度延びて「2017年ごろまで」とされ、在日米海軍司令部は1月上旬、「ことし後半に開始する予定」と発表。国は同月下旬、「早ければ7月以降」とさらに詳しく伝えた。第1陣はE2D早期警戒機5機になるという。

防衛局「情報ない」

 しかしその後、移転時期に関する情報は途絶えている。「そもそも米側は『ことし後半』としか言っていない。8月か9月かも分からない」と県幹部。中国四国防衛局の担当者も「米軍に確認中だが、まだ情報はない」と打ち明ける。

 移転を巡り、福田市長は「米軍や国の都合によるスケジュールありきでは判断しない」としつつ、国が示した「7月」を念頭に一連の手順を踏んだ。福田市長と基地周辺の山口県周防大島、和木両町長に続き、村岡知事が受け入れを表明したのは6月30日。しかし一向に移転の動きはなく、肩透かしを食らった格好だ。

 米軍の準機関紙・星条旗新聞によると、空母は7月上旬からオーストラリア沖で同国軍との合同演習に参加し、既に終了した。今後の動向について、在日米海軍司令部は中国新聞の取材に対し7月28日に回答し、「保安上の理由で、艦船の運用スケジュールについては言及しない。艦載機部隊の移転開始時期は分かり次第、あらためて発表などをする」としている。

米空母艦載機移転計画
 在日米軍再編で、艦載機が米海軍厚木基地から米海兵隊岩国基地へ移転する計画。山口県と岩国市、同県周防大島、和木両町は7月11日、国へ移転容認を伝えた。国によると、E2D早期警戒機5機に続き、11月ごろと来年5月ごろ、激しい騒音の主因とされるFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機計48機が移る。同年1月ごろには、EA18Gグラウラー電子戦機6機とC2輸送機2機が配備される。

(2017年8月1日朝刊掲載)

年別アーカイブ