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核軍縮 被爆地の役割模索 ひろしまラウンドテーブル開幕 岩国基地 リスク言及

 東アジアの核軍縮の道筋を専門家が議論する「ひろしまラウンドテーブル」(広島県主催)が1日、広島市南区のホテルで2日間の日程で始まった。米国、韓国、中国など7カ国の研究者や外相経験者、広島県の湯崎英彦知事たち16人が出席。米国の核問題の専門家は「北朝鮮の3月のミサイル実験は、米海兵隊岩国基地(岩国市)を仮想の標的にしていた」との見方を示し、情勢の悪化を懸念した。(明知隼二)

 米ミドルベリー国際大学院モントレー校・東アジア不拡散プログラムディレクターのジェフリー・ルイス氏が、北東アジアの非核化に関して基調報告。北朝鮮のミサイル4発が日本海に落下した3月の発射実験は、岩国基地を攻撃対象の一つに想定していたと指摘した。その根拠として、北朝鮮の国営メディアが流した映像の中の写真に写り込んだ実験計画の地図を示し、「(弾道を示す)4本の線が海に延び、一部が岩国基地につながっている」と指摘した。

 ルイス氏はさらに、ミサイル開発や核実験の進行状況を踏まえ「非核化の機会は既に失われた。核武装した北朝鮮とどう共存するのか、核使用のリスクをどう減らすかを考える段階に来ている」とも強調した。

 県と連携協定を結んだ、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)、スイス・ジュネーブの国連軍縮研究所の各研究者も報告。SIPRIのシビル・バウアー研究部長は、核兵器禁止条約を巡る核兵器保有国と非保有国の溝を埋めるため「相互の信頼醸成が重要。(被爆地の)広島が果たせる役割があるはずだ」と期待。国連軍縮研究所のジョン・ボリー研究部長は「核抑止は冷戦時代の理論。今は禁止条約によりその正統性が問われている」とした。

 ラウンドテーブルは、県の「国際平和拠点ひろしま構想」の一環で、2013年度に始まり5回目。報告に続く議論は非公開で、2日目の議論終了後に湯崎知事たちが会見し、成果を報告する。

ひろしまラウンドテーブル
 東アジアの核軍縮や軍備管理に焦点を当てた国内外の専門家による会議で、政府間の軍縮交渉を促す具体的な提案につなげるのが狙い。昨年度は、北東アジア地域の信頼醸成に向け、日本、米国、中国、韓国の4カ国が関わる地域対話などを提案する「議長サマリー」をまとめた。

(2017年8月2日朝刊掲載)

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