×

ニュース

12市町首長が協力方針 ヒバクシャ国際署名 本紙調査 基地周辺自治体も

 核兵器を禁じ、廃絶する条約の締結を全ての国に求める「ヒバクシャ国際署名」に、県内19市町のうち約6割の12市町の首長が、既に署名したか今後協力する方針でいることが、中国新聞の調べで分かった。岩国市など米海兵隊岩国基地周辺の自治体も含まれる。一方で村岡嗣政知事は署名をしない考えを示している。専門家は「安全保障は国の専管事項といわれるが、被害を受けるのは住民だ」と指摘している。

 「平和首長会議の一員として、核兵器廃絶の理念に賛同する」。米軍基地を抱える岩国市の福田良彦市長は、広島、長崎両市長の呼び掛けに応じ、7月下旬に署名した。同市は平和首長会議に加盟しており、2020年までの核兵器廃絶を目指すという同会議のビジョンに沿った形だ。

 既に署名したり今後協力する意向を示したりした首長は、岩国、柳井、光、山口、美祢、長門の6市長と和木、周防大島など全6町長。光市の市川熙市長は「再び被爆者を生まないため。私の中では署名しない方がおかしい」と話す。

 7月には国連交渉会議で核兵器禁止条約が採択され、「核兵器を使う」との威嚇も禁じた。米国の「核の傘」に入る日本政府は、この条約を支持しない方針を示している。

 署名をした和木町の米本正明町長は「現実の外交や防衛は国が担うものだ」とした上で、「恒久平和には核兵器廃絶が欠かせない」との立場だ。

 一方で、防府市の松浦正人市長は「現実には『核の傘』に守られている。政府と違う対応には慎重であるべきだ」として判断を留保した。周南、下関の2市長は現時点で署名しない方針だ。萩市の藤道健二市長は「市長ではなく、個人として署名した」とする。

 村岡知事は7月の記者会見で署名への考えを問われ、核兵器の廃絶は喫緊の課題とした上で「条約についての国のスタンスに関わる」として「(署名は)現時点で考えていない」とした。これに対し、日本被団協の田中熙巳代表委員は「県民を代表する立場として、国の方針に同調する必要はない」と批判した。

 長崎大核兵器廃絶研究センターの中村桂子准教授(国際政治学)は「核兵器で住民の安全が守れるのか、よく考えるべきだ。自治体が住民に最大限の安全を提供するのは義務であり、さまざまな形で声を上げるのは当然だ」とした。

<ヒバクシャ国際署名に対する県内市町長の主な対応>

     対応     理由
岩国市長 署名した    平和首長会議の一員として、核兵器廃絶の理念に賛同
柳井市長 署名した    世界から核兵器をなくそうという動きに賛同
下松市長 検討中     各市の状況を見ながら庁内で協議したい
周南市長 署名しない  平和首長会議で核兵器廃絶への姿勢は表明しており、個別の署名には原則応じていない
防府市長 検討中    日本は「核の傘」の一員。政府と違う対応には慎重であるべきだ
和木町長 署名した    外交や防衛は国が担うもの。恒久平和には核兵器廃絶が欠かせない
平生町長 署名した    家族に被爆者がいる。核兵器廃絶はライフワーク
田布施町長署名した   唯一の被爆国として当然

ヒバクシャ国際署名
 日本被団協が提唱し昨年4月に国内外で開始。呼び掛け文では「核兵器を禁じるのにためらいが必要か」などとし、全ての国が条約を締結するよう求める。7月24日現在、15府県知事を含む746の市町村長たちが署名済み。全体では6月9日現在で296万3889筆が集まっているという。

(2017年8月2日朝刊掲載)

年別アーカイブ