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核禁止条約 締結促進訴え 8・6平和宣言 広島市が骨子

保有国との橋渡し 政府は本気を

 広島市の松井一実市長は1日の記者会見で、被爆72年の原爆の日に平和記念式典で読み上げる平和宣言の骨子を発表した。核兵器を巡り緊迫する世界情勢に警鐘を鳴らす内容。7月7日に国連で制定された核兵器禁止条約の締結促進へ、非保有国と、反発する保有国の橋渡しに「本気で」取り組むよう日本政府に迫る。

 宣言では、原爆投下直後のきのこ雲の下に広がった「地獄」に、核兵器が存在する限り遭遇する可能性があると警告。核兵器は自国の安全保障にとって役に立たないと指摘し、使用は人類として決して許されない行為だと強く非難する。保有も人類全体に危険を及ぼすための巨額な費用投入にすぎないと主張する。

 一方、核兵器禁止条約が122カ国の賛同を得た事実に触れて、各国政府へ「核兵器のない世界」に向けた取り組みの前進を訴える。7回目となる松井市長の宣言では初めて憲法前文を引用し、平和主義を強調。日本政府に対し、条約加盟を直接求める下りはないが、「締結促進」という言葉にその意図を含めた。

 ほかに、行動理念として「良心」と「誠実」を提示。原爆被害の苦しみや怒りを乗り越えて世界平和を願う被爆者の体験に根差し、各国の指導者に求める姿勢を説く。被爆当時15歳と17歳だった男性2人の体験談も引く。

 松井市長は「被爆者を含む多くの人々が核兵器廃絶を望んでいるのは間違いない。実現するため、為政者レベルで話し合って理想的な対応をしてもらいたい気持ちを込めた」と述べた。(野田華奈子)

(2017年8月2日朝刊掲載)

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