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2代目平和の鐘 歌に 原爆焦土の金属で鋳造 顕彰する有志 6日披露

 原爆の日に鳴らす「平和の鐘」として、1949年の平和祭(現在の平和記念式典)で1度だけ使われた鐘をたたえる合唱曲「鐘よ、平和の鐘よ」が完成した。現在は、広島市中央公園(中区)に設置されている鐘を顕彰している市民有志の実行委員会が6日午前9時半から、現地で開く祈念式で初めて歌を披露。犠牲者を追悼し、世界平和を祈る。(村田拓也)

 鐘は2代目で、口径1・2メートル、高さ1・4メートル、重さ800キロ。約9メートルの高さの鉄柱につるされている。地元の13業者でつくる広島銅合金鋳造会が49年、広島の焼け跡の金属を鋳込んで造り、市に寄贈した。その後、式典の会場が近くの平和記念公園に移ったこともあり、鐘が鳴らされたのは1度だけだった。

 元市職員の高東博視さん(71)=佐伯区=が、鐘の由来を調べて実行委を立ち上げ、被爆70年の2015年に独自の式典を開催。原爆の日としては66年ぶりに音色を復活させた。

 3回目の式典となる今年は、鐘の存在を多くの人に知ってもらおうと合唱曲を制作。作詞・作曲は、中国放送(RCC)の元ディレクターで、「あきたかし」として音楽活動をする水野喬さん(79)=大阪府泉佐野市=が手掛けた。

 ♫平和の鐘よ さあ鐘よ 願い一つに世界へ響け―。水野さんは「復活した鐘に、平和への思いを託してほしいとの願いを込めた」と語る。

 当日は、広島合唱同好会のメンバー約40人が歌声を響かせる。代表の大上義輝さん(76)=安佐北区=は「めりはりをつけると感動する曲。力強く、声高らかに歌う」と練習を重ねる。

 平和の鐘は現在5代目。初代の鐘は盗難に遭い、市内の寺院から借りていた3、4代目の鐘は返却するなどされた。67年に人間国宝の故香取正彦氏が制作した5代目の鐘は、普段は原爆資料館が所蔵し、式典の日に会場で鳴らしている。

 実行委代表の高東さんは「2代目は現存する鐘で最も古く、復興の象徴といえる。合唱曲を通じて多くの人に親しんでもらい、歴史を語り継ぎたい」と意気込む。高東さん☎090(8604)7833。

(2017年8月3日朝刊掲載)

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