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爆心500メートル内の生存者調査記録 広島大名誉教授 鎌田七男さん資料 公開 

 広島大原爆放射線医科学研究所(原医研、広島市南区)は、原爆で壊滅した爆心地から半径500メートル以内の被爆生存者の調査記録をまとめた広島大名誉教授の鎌田七男さん(80)の資料を4日から、同大医学部医学資料館(南区)で初めて公開する。3日、内覧会があり、奇跡的に生き残り調査に協力した被爆者が訪れた。(野田華奈子)

 被爆生存者調査は1972年、原医研の前身である広島大原爆放射能医学研究所のプロジェクトとして始まった。当初から参加した鎌田さんは、生存を確かめた78人の被爆状況を聞き取り、生涯にわたる健康調査を継続。原爆が心身に及ぼす影響と核兵器の非人道性を実証した。

 鎌田さんは3月、78人分の個人ファイル110冊やインタビューを収めたCDなどを原医研に託した。同資料館ではこのうち、病床日誌や、やりとりした書簡など約20点が公開され、調査研究の経緯をまとめたパネル展示もある。内覧会に先立ち開かれた受領式で、鎌田さんは「世界に二つとない貴重な資料。これからの世代に継承しなければならないとの視点で管理し研究してほしい」と述べた。

 爆心地の東約260メートルの紙屋町(現中区)にあった芸備銀行本店で被爆し、調査に協力した光藤千代子さん(93)=東区=は内覧会を訪れた。「6ぺん死んどるんです」。被爆後に大腸がんや肺がんを患いながらも前向きに年を重ねてきた。

 鎌田さんに車いすを押してもらいながら資料を見学。術後の病床に、鎌田さんが蜂蜜を持参し、飲むよう薦めたエピソードを明かし、調査研究にとどまらない、半世紀にわたる交流を2人で語り合った。

 原医研は「貴重な資料の存在を広く知ってもらいたい。今後、整備と研究にまい進する」としている。展示は10月19日まで。無料。

(2017年8月4日朝刊掲載)

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