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小中学校で平和の集い 広島 8・6登校見送り

 広島市立の多くの小中学校が4日、平和を考える集会を開いた。教職員の関係法令の影響で本年度は、原爆の日の6日に登校日を設けられないため。各校は平和学習の発表や意見交換などの内容を工夫し、原爆の日に向けて思いを深めた。(野田華奈子、三宅瞳)

 中区の幟町小では、午前9時から全校児童約520人が平和集会に臨んだ。例年は平和記念式典のテレビ中継を見て黙とうし、平和について学んでいたが、ことしは集会の内容を変更。各学年の代表がこれまでの平和学習の感想を発表し、「原爆は人の絆や希望も奪った」「核兵器をなくす呼び掛けを広げたい」などと日ごろの学びを確かめ合う場となった。

 島本靖校長は「戦争は小さなことから起こる」として他人への思いやりを持つよう強調し、「6日は自分の胸の中で平和を誓ってほしい」と呼び掛けた。

 6年松田紗奈さん(11)は「テレビに合わせた黙とうがなく、いつもと違う環境だったけれど、みんなで学習内容を共有できる良い機会になった」。6日は祖母の被爆体験を聞き、戦争や核兵器のない世界についてじっくり考えるつもりだ。

 東区の牛田小では、平和記念式典で毎年、子ども代表が発表する「平和への誓い」の制作過程を、同校がまとめた約10分間のスライドで学習。西区の己斐中では、市教委の平和教育プログラムに応じたDVDを見て感想を話し合い、当時に思いをはせた。

【解説】在り方 見つめる契機に

 原爆投下時刻の午前8時15分に皆で黙とうをささげて犠牲者を悼み、核兵器廃絶を願う―。広島市立小中学校の大半がこれまで6日を登校日としてきた意義だ。平和記念式典のテレビ中継を視聴し、平和の尊さを考えてきた。

 市立小中全206校のうち、ことしは約半数が6日に近い4日を登校日とした。本年度から6日を休日とする市条例が学校現場に適用され、国との法律の絡みで教員が出勤できないという事情による。

 式典中継がない分、集会を短縮した学校がある一方、平和教育を再検討した学校もある。「長年、実施自体が目的になっていた側面もあった」と、幟町小(中区)の島本靖校長。児童が主体的に平和につながる行動を考えられるような集会内容に練り直した。

 市教委は従来のように6日を登校日にできるよう、来年度以降の対応を再検討している。学校の多くは、4日を「家庭で祈る原爆の日につながるよう学びを深め、気持ちを整える機会に」と位置付けた。「あの日」をともに思い、考える意義は変わらない。どういう形がふさわしいのか、見つめ直す契機にしたい。(野田華奈子)

(2017年8月5日朝刊掲載)

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