×

ニュース

「慰霊の日 飛来許せぬ」 艦載機移転 被爆者ら憤り

 米海兵隊岩国基地(岩国市)への空母艦載機移転は、広島に原爆が落とされた6日ごろから始まる見通しになった。「慰霊の日に飛来させるつもりか」。広島、岩国両市の被爆者団体や基地増強の影響を懸念する住民団体は4日、怒りの声を上げた。

 「米国は8・6がどういう日か承知していないのか。承知してのことなら、なおさら問題だ」。広島県被団協(坪井直理事長)の前田耕一郎事務局長(68)は、6日に移転が始まれば被爆者や遺族の感情を逆なでするとの懸念を示した。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(72)も「6日は恒久平和と核なき世界を願う一日。米国の認識が問われる」と強調。「北朝鮮の挑発行為が続く中、日本政府は憲法を守って平和外交を」と求めた。

 岩国市原爆被害者の会の山田英子さん(82)は「岩国にも被爆者は多い。米国だけでなく日本政府、市も思いやりを欠いている。亡くなった人を悼み、静かに迎えたいのに、(空母艦載機は)招かれざる客だ」。

 「早ければ7月以降」とされていた移転時期。ただ在日米軍司令部からの今回の通知には、中国四国防衛局内でも「突然の知らせ」との受け止めが広がった。「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」の森滝春子共同代表(78)は「地元に反対している人もいる中、何の打診もなく、直前になって決定事項として通知してくる米国側の姿勢にも腹が立つ」と語気を強めた。

 騒音や低空飛行などの被害を懸念する近隣市町の住民たちも、開始時期を「6日ごろ」としたことに「二重三重に怒りを感じる」と反発。岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会の菊間みどり共同代表(55)=廿日市市=は「被爆地広島の近くを艦載機が飛行する。その現実をあらためて直視しなければならない」と訴えた。

 艦載機移転の差し止めなどを国に求めた岩国爆音訴訟の控訴審が6月に広島高裁で始まったばかり。岩国爆音訴訟の会の藤川俊雄事務局長(69)は「原告団は移転差し止めを提訴内容に入れている。係争中にもかかわらず実施するのは腹立たしく遺憾だ。許すわけにはいかない」と話した。

(2017年8月5日朝刊掲載)

年別アーカイブ