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核廃絶へ 鍵握る夏 広島 あす原爆の日

 混迷を深める世界の未来を開く、鍵にしなければならない。先月、核兵器を持ち、戦争や脅しに使うのを全面的に禁止する国際条約が初めてできた。広島、長崎への原爆投下から72年。被爆者が重ねた廃絶の訴えに、核を持たない多くの国が応えた。ただ、核を持つ国どころか日本政府も反対を貫く。6日、原爆の日。ヒロシマから核兵器のない世界を願う声を高めたい。

 米ニューヨークの国連本部で開かれた、核兵器禁止条約をつくる交渉会議。開幕した3月27日に日本被団協事務局次長の藤森俊希さん(73)=長野県茅野市=が、7月7日の閉幕日にサーロー節子さん(85)=カナダ・トロント市=が各国政府の代表に向かって演説した。2人とも広島で被爆。肉親を失い、古里を破壊された悲しみや怒りを廃絶への原動力に変えてきた。

 出来上がった核兵器禁止条約は前文で、廃絶を訴えてきた被爆者の努力をたたえる。しかし、被爆者は3月末で16万4621人。この10年で8万7千人余りが亡くなった。平均年齢は81・41歳。核兵器の法的禁止の先にある「生きているうちになくして」という願いをかなえられるだろうか。

 肝心の核保有国は、段階的な軍縮を唱えて条約に猛反発。同調する日本は、国連大使が即座に「署名しない」と宣言した。

 6日に広島市が平和記念公園(中区)で営む平和記念式典に出席する36都道府県の遺族代表に対し、中国新聞は、日本が条約に加盟すべきか否か問うてみた。9割弱の32人が「加盟すべきだと思う」と答えた。

 北東アジアで核・ミサイル開発を続ける北朝鮮は脅威だ。だからといって「人間的悲惨」をもたらす核兵器の存在を肯定するわけにはいかない。ヒロシマの思想が今、試されている。

 松井一実市長は式典で読み上げる平和宣言で、禁止条約の締結を日本政府に呼び掛ける。核保有国と非保有国の「橋渡し」も求める。原爆慰霊碑の前に立つ安倍晋三首相が発する言葉に、これまで以上に耳を澄ます必要がある。

 市立小中学では今年、法令の影響で「8・6登校日」が消える。次代を担う子どもたちが原爆の日に平和を学ぶ意義もまた問い直される。(岡田浩平)

(2017年8月5日朝刊掲載)

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