×

ニュース

あすにも艦載機移転 基地周辺 反発と歓迎交錯

 米海兵隊岩国基地(岩国市)への空母艦載機移転が、「6日ごろ始まる」と国が同市や県に伝えた4日、基地近隣の住民たちからは反発と歓迎の声が交錯した。

 「日本側の都合や要望も米軍の運用に支障があれば考慮しない。移転2日前でも伝えてきただけ御の字だ」。岩国市の住民たちでつくる「愛宕山を守る会」の岡村寛世話人代表(73)は、そう皮肉る。今後も移転計画は米軍次第だと指摘し、「右往左往するのではなく、米軍に従属させられている今の状況を根本的に考えなければならない」と訴えた。

 移転反対の活動をしてきた市民団体は、決意を新たにする。周防大島町の「大島の静かな空を守る会」の河井弘志代表委員(81)は「住民の思いを考えずに容認の判断をした県や市町には、もう一度考え直し、撤回を求めたい」。岩国市の「住民投票を力にする会」の松田一志代表(59)も「移転を容認した人たちも騒音や犯罪などの不安はあるはず。反対運動をさらに強める」と力を込めた。

 第1陣となるE2D早期警戒機はプロペラ機だが、米計画では11月ごろには激しい騒音の主因とされるFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機の移転も始まる。「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」の久米慶典顧問(61)は「E2Dで住民感情を慣らす狙いがあるのかもしれないが、FA18が来れば騒音状況はさらに一変するだろう」とみる。

 一方で、地域活性化への期待を高めるのは地元経済界だ。岩国商工会議所の長野寿会頭(80)は「経済界としてはこれからが本番。地域の安心と経済の活性化のため、軍人や軍属、その家族たちと良好な関係を築きたい」と強調した。

 6日、広島は被爆72年を迎える。同市藤生のパート上本薫子さん(75)は「移転は決定事項だから仕方ないが、原爆の日に移転を開始するのなら、あまりにも無神経だ」と憤った。

騒音測定器増設を/飛行訓練を安全に 周辺首長 警戒強める

 米空母艦載機の移転開始時期の県や岩国市への伝達を受け、騒音被害などを懸念する周辺市町の首長たちは警戒を強めた。

 「騒音への不安がある。国に新たな騒音測定器の設置を急いでもらい移転前後の変化を注視したい」と話すのは、当初の移転計画よりも騒音区域の拡大が予測される周防大島町の椎木巧町長。和木町の米本正明町長は「今後の情勢を注意深く見守りたい」と述べた。

 柳井市の井原健太郎市長は「飛行訓練は市民の安心安全の観点での実施を求める。市で設置した騒音測定器でも実態を把握したい」と話した。

(2017年8月5日朝刊掲載)

年別アーカイブ