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舞台の片隅に 監督解説 映画 「この世界の…」 ファン200人 劇中巡り写真資料も

 アニメ映画「この世界の片隅に」のファン約200人が5日、呉市を訪れ、劇中に描かれた場所を巡った。片渕須直監督(56)も駆け付け、戦争当時の街の姿や暮らしを解説した。(見田崇志)

 県内外から集まったファンは、小春橋や国重要文化財の旧澤原家住宅など約4キロの道のりを歩いた。案内役は「呉観光ボランティアの会」が務めた。

 映画で「下士官兵集会所」として登場する青山クラブでは、片渕監督が出迎え。参加者は驚きと喜びの声を上げた。片渕監督は自ら集めた当時の街並みの写真資料を示し「現実にあった歴史だと感じられるよう、今も残る風景を映画に数多く登場させた」と裏話も紹介した。

 JR西日本がインターネットサービス会員を対象に企画した。大阪市の会社員江原秀記さん(38)は「今は昔とつながっていると実感した。6日は広島市を訪れる」と話していた。参加者はこの後、呉市の映画館で本編をあらためて鑑賞した。

戦前の暮らし 今へ 片渕監督に聞く

 5日にアニメ映画「この世界の片隅に」に描かれた呉市内のゆかりの地を巡るファンの前に現れ、製作の裏話などを披露した片渕須直監督。呉空襲や広島市への原爆投下、平和への願いなどについて聞いた。(浜村満大)

  ―映画製作に先立ち、取材で何度も訪れた呉市の印象を聞かせて下さい。
 呉は旧海軍工廠(こうしょう)があり、明治期に軍港の街として発展した。青山クラブなど当時の建築は今も残り、さまざまな意味合いが感じられる。

  ―国内外で7、8月も上映されています。作品から感じてほしいことは。
 (原作者の)こうの史代さんが描いた主人公のすずさんの親しみやすさが物語の魅力の一つ。普遍性があり、海外でも共感を受けた。戦争の前後も人々の暮らしがあり、今につながっている。時の流れを感じられるよう映像を作った。映画を入り口に戦争や人々の暮らしぶりを理解し、見聞を広めてほしい。

  ―6日の平和記念式典に初めて参加されますね。心境は。
 広島市を初めて訪れたのは2010年夏。その後も取材などで訪れた。平和記念公園(広島市中区)になっている中島本町はかつて、元気で華やかな街だったそうだ。原爆が落とされる前まで、人々が暑い夏の日々を暮らしていたことも聞いた。式典の黙とうでは、さまざまな思いが去来するだろう。

(2017年8月6日朝刊掲載)

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