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被爆者の声 条約後押し 中満泉・国連事務次長に聞く

推進・反対派の対話必要

 平和記念式典に参列した国連の中満泉・軍縮担当上級代表(事務次長)が6日、広島市内で中国新聞のインタビューに応じた。7月の核兵器禁止条約成立を巡り「被爆者からの声が大きかった」と被爆地の役割を評価。一方で、条約の推進派、反対派双方の亀裂には懸念を示した。(金崎由美、水川恭輔)

  ―核兵器禁止条約をどう評価していますか。
 核兵器を人道上の視点から全面的に禁止しよう、と一部の国や非政府組織(NGO)が動いたが、その中で被爆者からの声は大きかった。核兵器廃絶の前段階として、包括的な禁止を初めて成文化した意義は大きい。だが条約反対派の反発は強い。推進派との対話が途切れている。対話の再開と共通の土台づくりを、と事務総長も関係各国に働き掛けているところだ。条約の第1回締約国会議の場としてオーストリア政府が手を挙げているが、課題の多いスタートになりそうだ。

  ―日本政府には保有国と非保有国の橋渡しが期待される一方、「まず自国で批准し、他国に働き掛けを」との声も被爆地にあります。
 核保有国は核軍縮について特別の責任を持ち、国際的な圧力は高まっている。だが批准への圧力だけではうまくいかない。橋渡しなら2020年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で保有国から具体的な核軍縮の行動を引き出すという考えもある。「NPTを補完する核軍縮の枠組みが必要」という禁止条約のうねりは、前回のNPT再検討会議の決裂が契機だった。そのことを考えても、NPT体制の堅持でもある軍縮の具体策が求められる。

  ―各国代表による条約の署名が9月20日に始まります。被爆者も招かれる可能性はありますか。
 先日、条約推進の中心となった国の大使が事務総長を訪れ、「市民社会の人たちも出席してもらいたい」と語った。そうなれば被爆者の参加も可能だろう。

  ―平和記念式典ではグテレス事務総長のメッセージを代読しました。今後、事務総長の広島訪問は。
 非常に多忙であり、まだ分からない。広島と長崎を訪れる重要性を本人に伝えてはいる。被爆地訪問の意思はある。

(2017年8月7日朝刊掲載)

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