×

ニュース

湯崎英彦広島県知事あいさつ(要旨) ヒロシマ8・6

 昨年、オバマ米大統領は、ここ広島で、未来において広島と長崎が、核時代の始まった場所ではなく、人類が道徳的に目覚めた場所として記憶されなければならないとスピーチされました。その後、私たちはどれだけ歩みを進められたでしょうか。

 先月、被爆者の苦痛に言及する核兵器禁止条約が122カ国の賛成により採択されました。一方で、核兵器国の一部は、核の近代化を図るとともにその戦力強化を叫んでおり、条約には参加するどころか反発を強めています。また、北朝鮮は核兵器開発の手を止めようともしていません。現状では、核兵器国と非核兵器国の分断が広がると同時に核兵器の拡散は進み、「覚醒」はむしろ遠のいていないでしょうか。

 安全保障環境が厳しいと言われている今こそ、いかなる核兵器使用も地獄をつくり出すだけである、という現実に立ち返り、絶対に使わないことを最終的に保証する唯一の手段である「廃絶」に向けて、人類の英知を集めるときです。

 日本政府には、この地獄の現実をくぐり抜けた唯一の国として、そのリーダーとなっていただきたい。核兵器国と非核兵器国の分断を埋め、核兵器廃絶への道のりを全ての国の力で進んでいくために必要な、具体的な提案と行動の提示をお願いする。私たちはオバマ大統領が指摘したように、恐怖の論理、すなわち神話にすぎない核抑止論から脱却し、「核兵器のない平和」というあるべき現実に転回しなければなりません。

 広島県としても、国際平和拠点ひろしま構想に基づき、核兵器廃絶に向けて世界の知恵を集め、世界の指導者に被爆地訪問を呼び掛けるなどできる限りの行動を取ります。全ての被爆者に対する責務として、将来の世代に核兵器を廃絶し、誰もが幸せで豊かに暮らせる平和な世界を残せるよう、世界の皆さまと行動していくとともに、高齢化が進む国内外の被爆者援護のさらなる充実に全力を尽くすと改めて誓います。

(2017年8月7日朝刊掲載)

年別アーカイブ