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[変わる岩国基地] グラウラー 騒音「現状と大差なし」 艦載機移転 市がデータ公開

 米海軍厚木基地(神奈川県)から米海兵隊岩国基地(岩国市)への空母艦載機61機の移転計画を巡り、岩国市は、5月下旬から約1カ月間、同基地へ一時配備されたEA18Gグラウラー電子戦機の騒音データをまとめた。数値上は既存の機種と大きな差はなかった。一方で、騒音悪化を懸念する市民団体は「運用実態をつかむ上では不十分」として、徹底した調査を求めている。(藤田智)

 グラウラーは、移転予定機数の約8割を占めるFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機の派生型で、来年1月に6機の移転が予定される。従来型ホーネットよりも出力の高いエンジンを搭載する両機種は、厚木基地周辺の騒音被害の主因とされる。今回は、配備先の三沢基地(青森県)などの滑走路改修工事に伴い、5月24日~7月3日に同型機6機が岩国で運用された。

70デシベル以上47回

 市は、設置する五つの騒音測定器のうち、滑走路南側の尾津町、北側の川口町でグラウラーと特定できた数値を明らかにした。5月27日以降、新幹線車内に当たる70デシベル以上で5秒継続した騒音は15日あり、尾津、川口町ともに計47回だった。

 このうち最大値は南側へ向けた離陸時で93・6デシベル(尾津町・5月30日)、北側への離陸時に91・7デシベル(川口町・同27日)。この2回を含め、地下鉄車内に相当する90デシベル以上は両地点で計4回。交通量の多い道路に当たる80デシベル以上は同53回。

 記者が離陸を確認した他の同基地配備機との比較では、6月14日午後2時ごろ、グラウラーの離陸時は尾津町で84・0デシベル、川口町で80・7デシベルに対し、直前に離陸したホーネットはそれぞれ81・6デシベル、81・8デシベルだった。翌15日午前は、グラウラーが尾津町で79・2デシベル、川口町で89・2デシベル。ステルス戦闘機F35Bは尾津町で最大81・5デシベル、川口町で同89・6デシベルを計測した。

 市基地政策課は「個別に比べると他機種を上回ることもあるが、大差はない」とみる。

苦情最多155件

 ただ騒音は、風向きや雲の高低など気象条件に左右される一方、米軍の運用次第で騒音被害は広範囲に及ぶ。7月10日夜、F35Bが市街地上空を飛行し、市への苦情は155件に達した。1998年の夜間離着陸訓練(NLP)を除き、1日当たり過去最多だった。

 市民団体「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会」の坂本千尋共同代表は「調査は離着陸の回数や機数が不明で、実態をつかみきれていない」と指摘。移転後は飛行ルートや訓練空域が多様化する可能性もあり、「住民への影響を見極めるには、測定器の設置範囲を広げるなどより詳しい調査が必要だ」とする。

岩国市の航空機騒音測定
 尾津町、川口町に各1台、由宇町に3台ある騒音測定器で、70デシベル以上かつ5秒継続した音を24時間記録。2012年からは米軍機の飛行情報の収集業務を委嘱する民間の「情報提供協力員」1人を通じ、目視か撮影などで離着陸や時間帯を確認している。今回のグラウラ―の測定回数と数値は、飛行状況の全てではない。

(2017年8月8日朝刊掲載)

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