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核廃絶の道筋に溝 80ヵ国・EU 式典に代表出席

 広島市中区の平和記念公園で6日にあった平和記念式典には、80カ国と欧州連合(EU)の代表が参列し、72年前の被爆の惨状に思いをはせた。松井一実市長が平和宣言で締結促進を訴えた核兵器禁止条約については、各国代表の意見が分かれた。(小林可奈、新山京子)

 核兵器保有国では、米国はロバート・ラプソン臨時代理大使が出席。ロシア、英国、フランスの3カ国も代表を派遣した。中国は欠席した。核拡散防止条約(NPT)非加盟のインド、パキスタン、イスラエルの代表も参列した。

 出席した国の数は2015年の100カ国、16年の91カ国に次いで3番目に多かった。

 条約制定を巡る投票で賛成したドミニカ共和国のエクトル・ドミンゲス大使は「式典は被爆者の悲しみに触れる機会になった」と振り返り、「制定は核兵器廃絶への大きな一歩だ」と話した。

 制定を主導した国の一つ、オーストリアのヘルベルト・ピッヒラー首席公使も「条約には被爆者の苦しみが盛り込まれている。核保有国などが交渉に加わらなかったことは残念だが、賛同国が増えるよう対話を続けたい」と強調した。

 一方、英国のポール・マデン大使は、NPT体制の必要性などを挙げ、制定交渉に参加しなかった自国の正当性をあらためて示した。米国の核戦略に頼る北大西洋条約機構(NATO)に加盟するデンマークのフレディ・スベイネ大使も「核の傘や原子力に依存する社会で、非核の実現は難しい」と述べた。

 式典後、18カ国とEUの代表たち計25人は、市が企画した被爆建物の見学ツアーに参加。現存する旧陸軍被服支廠(ししょう)(南区)と、市郷土資料館(同)を巡った。

(2017年8月7日朝刊掲載)

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