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部隊展開 住宅街に不安 PAC3 外交解決望む声

 中四国4県の陸上自衛隊駐屯地に12日、配備が完了した地対空誘導弾パトリオット(PAC3)。周辺住民には、抑止力として期待の声があった一方、急な部隊展開に不安や戸惑いも広がった。米国と北朝鮮の間で緊張が高まる中、外交による解決を望む声も相次いだ。

 広島県海田町の陸自海田市駐屯地には、PAC3を搭載した車両などが正午前から数台ずつに分かれて到着。お盆の渋滞と重なったため当初の予定より遅れたが、午後2時までに十数台が敷地入りした。

 周辺では住民約20人が到着を見守った。同町の男性(70)は「北朝鮮ににらみを利かせる効果はある」と期待。一方、駐屯地近くで働く同県熊野町の会社員高橋美佳さん(22)は「北朝鮮のミサイル発射実験の距離がどんどん伸びていて恐ろしい。巻き込まれたら大変」と不安そうに話した。

 同駐屯地は住宅街や工場などに囲まれ、近くに学校や病院もある。海田町へ買い物に来た広島市南区の井手本健二さん(77)は「PAC3による迎撃の実績はない。百発百中でない限り安心できない」と指摘した。

 町自治会連合会の山岡崇義会長(81)は「安心して盆を迎えたい。発射させないよう、外交や働き掛けを政府に頑張ってほしい」と望んだ。海田町の西田祐三町長は「万一の場合、全国瞬時警報システム(Jアラート)などを通じて住民に情報を的確に伝える」と話した。

 出雲市街の西約2キロの田園地帯にある出雲駐屯地(同市)。近くに住む曽田保則さん(73)は「(部隊を)ぱっと見て不安になった。話し合いで解決できないのか。ミサイルを撃ち落としても、残骸が落ちてきたら意味がない」と落ち着かない様子だった。(田中伸武、井上龍太郎)

中四国は「空白地帯」 ミサイル防衛 多層化へ

 防衛省・自衛隊がPAC3の部隊を展開した中四国は、弾道ミサイル防衛(BMD)の「空白地帯」に当たり、政府は配備先から移動させた。相次ぐ北朝鮮の弾道ミサイル発射を踏まえ、イージス艦とPAC3との組み合わせに加え、陸上配備型イージスシステムを検討するなど、多層的な迎撃態勢を急ぐ。

 PAC3は通常、航空自衛隊の千歳(北海道)や入間(埼玉県)、岐阜、芦屋(福岡県)、那覇(沖縄県)の各基地などに配備されている。

 イージス艦に搭載する海上配備型迎撃ミサイル(SM3)が撃ち損じた際、PAC3が対処する想定だが、射程の短さからスポット的な役割となる。このため、今回も岐阜や白山(三重)、饗庭野(滋賀)から陸路で島根、広島、愛媛、高知の4県に運んだ。

(2017年8月13日朝刊掲載)

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