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被爆体験 米で語る決意 「核兵器の恐ろしさ伝える」 ロス在住の福島さん

 広島で被爆し、米国ロサンゼルスで暮らす福島栄子さん(86)が、現地で被爆体験を語り始めた。昨年に手記をまとめたが、オバマ前米大統領の広島訪問や核開発を進める北朝鮮の情勢などを受け、記憶を次代に継ぐ必要性を強く感じたという。「核兵器の恐ろしさを伝えるため、被爆者が語らなくては」と力を込める。

 14歳のとき、学徒動員先の南観音町(現西区)の三菱重工業広島機械製作所で被爆した。宇品町(現南区)の自宅に帰る道で手を差し出して水を求める人たち、公園で野宿した1週間…。

 戦後は日系2世の男性と結婚し、1956年に渡米。米国では「原爆のおかげで早く戦争が終わった」との声も聞いた。デパートの洋裁の仕事を辞める77歳まで、広島出身であることは積極的に明かさなかったという。

 昨年5月、広島を訪問し、被爆者に思いを寄せるオバマ大統領の姿に胸を打たれた。同年7月に凄惨(せいさん)な体験を手記にまとめ、初めて体験を講演。熱心に聴く米国人を前に語る意味を実感したという。

 ミサイル発射を繰り返す北朝鮮や核戦力増強に意欲を示すトランプ政権にも恐怖を感じた。「体験を語ることしかできないが、それが核兵器の恐ろしさを理解してもらう一番の方法」。来年の講演会も決まっており、機会を捉え伝えていく決意だ。(小笠原芳)

(2017年8月15日朝刊掲載)

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