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[変わる岩国基地] 米軍業務 受注に「商機」 地元経済界 艦載機移転にらみ

 米海軍厚木基地(神奈川県)から米海兵隊岩国基地(岩国市)への空母艦載機61機の移転に絡み、岩国市内や近郊の商工業者が新たな消費の取り込みへ動き始めている。米軍関係者の増加を「商機」と見る岩国商工会議所はサポート態勢を整え、不動産業者は新たな米軍向け賃貸物件を用意する。一方で、「今後どれくらいの需要があるのか、はっきりしない点も多い」と静観する声も聞かれる。

 「米軍との取引には資格取得の手続きが必要」「米側のホームページ(HP)は専門用語が多い。いつでも問い合わせて」。7月、同商議所と岩国基地が開いた基地発注の備品調達や事務・生活関連サービスの入札説明会。基地補給部の解説に、清掃用品などを扱うオガワ(柳井市)の小川博敏社長は「発注内容を見極め、チャンスがあれば参加したい」と意欲を示した。

 移転により、基地内外に居住する市内の米軍関係者は1万人を超え、約13万5千人の市人口の1割強となる。地元企業を後押ししたい同商議所は7月、日本人の元基地従業員にアドバイザー業務を委嘱し、基地側の発注内容の和訳と商議所HPへの掲載を始めた。8月22日には、アドバイザーらによる相談窓口「米軍ビジネスサポートセンター」を開設し、事業展開や基地内へのPRについての個別相談に取り組む。

 米軍側の期待もある。同基地によると、2016年の発注業務はクリーニングや引っ越しなど300件超。ただ、米政府の入札システムに参加している地元企業は少なく、基地補給部は「積極的に入札に参加してもらい、競争性を高めたい」と狙いを語る。

 昨夏オープンしたJR岩国駅前の居酒屋「喜いち」は7月に英文メニューを作った。広本優マネジャーは「英語版を用意して以降、母国語で料理をイメージできるためか注文の種類も増えた」と手応えを感じる。それまでは身ぶり手ぶりやスマートフォンの翻訳機能を交えて対応。外国人には難解な居酒屋特有の言葉を伝えにくく、混雑時には十分な接客ができなかった。

 広本マネジャーは「サービスの質もスピードも向上した」と喜ぶ。PRも強めようと、基地内で配布されている雑誌への広告掲載も決めた。

 米軍関係者の「基地外居住」も一定数増えるとみられ、岩国市は「2千人前後になる」と推測する。4LDKで15万円前後と、日本人向けより割高で契約される米軍向け賃貸住宅が市内各地で建設中だ。

 約30件の米軍向け物件を管理する岡崎不動産商事(岩国市)は、新たに10世帯分を追加するという。村河多丸社長は「高額で貸すことができ、大家にも仲介業者にも利益が大きい。投資対象として魅力的と見る人はいる」と特徴を話す。

 一方、複数の不動産関係者によると、米側に基地内居住を優先する動きがあり「見通しが立てにくい」という。村河社長も「普段は満室だが、今は4件の空室がある。これまでにない動きで、ことしいっぱいは注視したい」と話す。

 これまで在日米軍再編に絡む国発注の基地内外の工事では、地元業者の受注額が1千億円を超えたとされる。同商議所の長野寿会頭は「今後はいかに(米軍のニーズの)受け皿をつくっていくかが大事。経済振興につながるようフォローアップしたい」と力を込めた。(藤田智)

(2017年8月22日朝刊掲載)

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