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被爆者対策費1306億円 「体験伝承者」派遣後押し

 厚生労働省は25日発表した2018年度予算案の概算要求で、被爆者対策費として1306億円を計上した。17年度当初と比べ19億円減で、被爆者の減少が主な要因。広島市が養成している「被爆体験伝承者」の国内外への派遣を後押しするため、3千万円を初めて盛り込んだ。

 伝承者の養成は、高齢化する被爆者に代わって次代に体験を語り伝える人材を増やすため、広島市が12年度から実施している。厚労省は旅費などの派遣費用を補助するほか、手話学習などのための研修費を助成する。

 日米両政府が共同運営する放射線影響研究所(放影研、広島市南区)は、移転に向けた調査費の補助として1千万円を新たに計上した。広島市が提案した市総合健康センター(中区)への移転案を軸に、必要経費や精密機器の移転方法を調べる。

 被爆建物の保存支援は、2件分4千万円盛り込んだ。また、17年度に続き、広島市東区の保養施設「神田山荘」の修繕費の補助として1千万円を充てる。

 被爆者が減っているため、一定の病気にかかれば支給する健康管理手当(月額約3万4千円)は3億円減の561億円。被爆者の医療費なども20億円減の321億円となった。原爆症に認定された被爆者が受給する医療特別手当(同約14万円)は17年度当初と同じ249億円だった。

 国が定めた被爆地域外で原爆に遭った長崎の「被爆体験者」への医療助成では、対象の病気として追加した糖尿病の合併症向けに3千万円を計上した。(田中美千子)

(2017年8月26日朝刊掲載)

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