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社説・コラム

天風録 『ミサイル警報』

 テレビにくぎ付けになった。北朝鮮がミサイルを発射した、きのう早朝のことだ。政府が警報を出してから、北海道上空の通過を確認するまで約5分。事なきを願うしかなかった▲一斉に各局の映像が切り替わった。「北朝鮮から発射されたもようです」。警報エリアは東日本各地。親戚や友人の身を案じた人もいよう。アナウンサーは「頑丈な建物や地下に避難してください」と繰り返す。わずかな猶予で一体どこへ。疑問と不安が大きくなったといえよう▲いぶかる声は、避難訓練が各地で始まった春先から聞かれた。6月に中国地方で初めて実施した山口県阿武町でも。「爆弾が落ちたら屋内でも安全じゃない」。先の戦争を知る世代である▲不気味なサイレンは、頭巾をかぶり防空壕(ごう)に駆け込んだ記憶を呼び覚ます。子や孫には同じ思いをさせたくない―。再出発した戦後日本が再び、異国からの「飛来物」に脅かされるとは▲「国民の生命を守るために万全の態勢を取ってきた」とした、きのうの首相の言葉と国民の実感には大きな隔たりがあろう。北朝鮮は核兵器の小型化に成功したとの情報も。真の意味での警報解除は世界から核をなくす以外にはあるまい。

(2017年8月30日朝刊掲載)

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