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社説・コラム

社説 オスプレイ緊急着陸 危機感欠く米軍の姿勢

 またしてもトラブルである。米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイ1機がおとといの夕方、大分県国東市の大分空港に緊急着陸した。機体から白煙が上がり、炎を噴く映像も流れた。

 オスプレイは、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属の機体が昨年12月、同県名護市沖の浅瀬に不時着して大破。今月5日にはオーストラリア沖で墜落、海兵隊員3人が死亡した。事故の深刻度が最も重大な「クラスA」の事故を、この1年だけで2回も起こしている。

 これまでも再三指摘されてきた通り、何か構造的な欠陥があるのではないか。事故原因と解決策を示さぬままの、これ以上の飛行は無責任極まりない。

 加えて今回問題なのは、緊急着陸した機体が、6月にも沖縄県伊江島にある米軍の補助飛行場に緊急着陸し、さらに米海兵隊岩国基地にいた28日にも白煙を上げていたことである。

 機体の異常を知りながら無理に飛び立ち、緊急事態を招いたとも受け取れる。とすれば、あまりに危機感を欠いた、無謀な行いと言わざるを得ない。

 オスプレイの運用が、地域住民の暮らしや安全を脅かすものであってはなるまい。重大な事故が起きれば、最優先で原因の解明に当たり、再発防止策を講じるのが当然だろう。

 にもかかわらず、名護市沖の際には事故から6日後に飛行を全面再開した。オーストラリア沖の墜落事故では翌日にもう、普天間から飛ばしている。いずれも日本政府による飛行自粛の要請は事実上、突っぱねられた格好である。

 トラブル続発で住民の間に高まる不安の声を捨て置く、米軍の居丈高な姿勢は信頼を損なうものでしかない。

 米軍の説明をうのみにする、日本政府の及び腰も目に余る。オーストラリア沖の事故では原因調査も半ばのまま、米軍が「機体に欠陥はない」と片付けると、小野寺五典防衛相は「理解できる」とあっさり容認した。飛行自粛を申し入れた、その翌日のことである。

 あの自粛要請は一体、何だったのだろう。「安全が最優先」と繰り返しながら、欠陥が疑われるオスプレイに対し、なすすべを知らぬ政府に疑念を深くした国民も少なくあるまい。

 日本の頭越しに北朝鮮の弾道ミサイルが発射されたきのう、安倍晋三首相は「緊張感を持って国民の安全、安心の確保に万全を期す」と言葉を強めた。墜落事故や不時着、緊急着陸を繰り返すオスプレイは、目の前にある危険ではないのだろうか。

 オスプレイは2012年に普天間に配備されて以降、米軍基地や自衛隊駐屯地に飛来。陸上自衛隊も導入・配備を計画し、飛来ルートは今後、さらに各地へ広がりかねない。

 オーストラリア沖の事故を受け、沖縄県議会はオスプレイの配備撤回などを求める決議と意見書を可決した。山口県と岩国市など2市2町は、岩国基地から離陸した機体が緊急着陸した今回の事態を受け、機体整備の徹底などを国に申し入れた。人ごとではないのである。

 「国民の安全」を守るという政府には、こうした疑念を拭い去るだけの事故原因の究明を求めてもらいたい。そして米軍任せの飛行自粛ではなく、飛行中止を要請するのが筋である。

(2017年8月31日朝刊掲載)

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