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社説・コラム

やまびこ 続く慰霊祭 平和の原点

 庄原市主催の戦没者追悼式が今年も営まれ、遺族や市民約600人が、先の大戦で犠牲となった市内出身者2923人を悼んだ。

 空襲被害はなかった庄原だが、戦争の痕跡は意外に多い。山内(やまのうち)町と東本町には原爆犠牲者計172人の遺骨が眠る。被爆直後、広島市から運ばれる負傷者の臨時病棟が設けられていたためだ。戦時下の1940年に着工した高野町の高暮ダムでは、工事に動員されて命を落とした朝鮮人労働者が少なくなかったことも、関係者の証言で明らかになっている。

 こうした過去が歴史の闇に埋もれなかったのは、各地域の住民や僧侶が毎年、手弁当で開いている慰霊祭によるところが大きい。遺族や知人でもない人たちが、人道的な思いから続けているこうした活動は同時に、平和な社会づくりの原点を成すようにも感じる。(伊東雅之)

(2017年9月1日朝刊掲載)

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