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社説・コラム

『書評』 「さるかに共和国建国宣言」 郷土の本 海外や古里で貢献した生涯

 福山市出身で、中国との草の根交流や古里の地域づくりに力を注いだ笹山徳治さんの自伝「さるかに共和国建国宣言」が刊行された。ことし2月に66歳で亡くなった笹山さんが生涯を振り返っている。

 笹山さんは1972年、青年代表団の一員として、国交正常化した中国を訪れたのを機に中国文化への関心を深めた。倉敷市で高校教諭を務め、福山に戻った後、日本語教室などで中国から帰国した残留邦人を支援。市日中友好協会などで築いた人脈を生かし、災害時には国際医療ボランティア団体AMDA(岡山市北区)の救援活動に協力した。カンボジアでの井戸掘りなど、アジア各国にも目を向けた。

 古里を活気づけたいとの思いも強く、地域おこし団体「さるかに共和国」を発足させ、特産品づくりや里山の整備に取り組んだ。

 相手の国や、そこに暮らす人々を知る大切さを説く笹山さん。AMDAグループの菅波茂代表は「人生をかけて創り上げた『義』の人間関係は日本の公共財産」と本書の冒頭に寄せている。

 2160円。吉備人出版。(鈴木大介)

(2017年9月3日朝刊掲載)

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