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社説・コラム

社説 北朝鮮核実験 被爆地顧みない暴挙だ

 度重なるミサイル発射にとどまらず、北朝鮮はきのう6回目の核実験を強行した。一体どこまで挑発をエスカレートさせるつもりなのか。

 北朝鮮の報道によると、大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験に「完全に成功した」という。核弾頭の動作の信頼性が確認されたとも表明した。自らを核兵器を持つ国として国際社会に認めさせ、現在の体制を維持する「切り札」とする狙いがあるのだろう。

 自国の野望のため核兵器を利用する姿勢は、廃絶を訴えてきた被爆地の願いを踏みにじるものだ。強い憤りを覚える。そもそも、関係国による再三の自制を求める声や国連安全保障理事会が決めた経済制裁を無視した暴挙である。かつてなく高まっている緊張をさらに高めかねない。断じて許せない。

 北朝鮮にとって重要な節目である9日の建国記念日を控え、国威発揚を狙ったのではないか。実際、昨年はこの日に実施している。しかも今回、爆発の規模は過去最大で、威力は前回の5~6倍との分析もある。主張する通り、水爆なのかどうか早急な分析が求められる。

 核実験は、1月にトランプ米大統領が就任して以来初めてである。2年連続での実施も前例はない。米国本土を核攻撃できる能力を得るために、技術開発を急いだのだろう。

 7月には、2回にわたってICBM発射を強行した。今回、報道通りであれば、米国が最も警戒している米本土への核攻撃が現実の脅威になりつつあるのは確かといえよう。

 米国が危機感を一層強めるのは間違いあるまい。トランプ政権が「あらゆる選択肢」を排除しないと述べていることに加え、内政で幾つも問題を抱えるだけに、冷静さを失って対応してしまわないか不安だ。武力行使だけは、何としても避けなければならない。

 そのためにも、日本政府は、米国や韓国と足並みをそろえて国際的な包囲網をより確かにする必要がある。米国には軽率な言動を控えるよう求めつつ、北朝鮮には挑発を繰り返させないようにすることが欠かせない。

 経済制裁に消極的な中国やロシアをどう巻き込むかが、鍵を握る。両国ともミサイル発射より核実験の方が抵抗感は強い。実効性のある制裁にするためにも、粘り強く説得したい。

 5年に1度の重要な共産党大会を10月に控えた中国は、北朝鮮に自制を求めていた。今回の核実験強行で顔に泥を塗られた形だ。そのせいか、「断固たる反対と強烈な非難を表明する」との厳しい調子の声明を発表した。これをてこに、経済的な圧力をもっと強めるよう、日本政府としても働き掛けを急ぐべきである。

 ロシアも「最大限の非難に値する」との声明を出した。北朝鮮の挑発に歯止めをかけるためできることは多い。6日にプーチン大統領と会談する予定の安倍晋三首相は、経済制裁への協力を強く迫ることが不可欠だ。

 早晩開かれる国連安保理の緊急会合では、中国やロシアの協力も得て、一段と厳しくて効果のある経済制裁をまとめることが必要だ。国際社会が冷静に、しかも毅然(きぜん)として北朝鮮に対峙(たいじ)することこそが、対話による解決への道を開くはずだ。

(2017年9月4日朝刊掲載)

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