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核実験 愚行またも 被爆者、批判強める 中国地方 基地や原発 懸念

 「挑発はどこまで続くのか」。北朝鮮が6回目の核実験を強行した3日、中国地方の被爆者や市民からは憤りの声が相次いだ。北海道上空を通過する中距離弾道ミサイルを発射してからわずか5日後の核実験に、不安や疑念が広がった。

 「度重なる抗議に応えず腹立たしい」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(75)は声を震わせた。

 7月の国連での核兵器禁止条約制定の後、ともに長崎から核兵器廃絶を訴え続けた被爆者の谷口稜曄(すみてる)さん、元長崎大学長土山秀夫さんの訃報を聞いたばかり。「亡くなられた被爆者のためにも、一層声を上げる時だ」と力を込めた。

 もう一つの広島県被団協(佐久間邦彦理事長)の大越和郎事務局長(77)は「自国の安全保障を米国の核兵器に依存したまま、北朝鮮に非核化を迫っても説得力を欠く。自ら禁止条約に入り、北朝鮮にも加盟を求めることで打開を目指せ」と日本政府の役割を強調した。

 広島市立大広島平和研究所の水本和実副所長(核軍縮)は「米国に対して対話、交渉したいという意識の表れといえる。対話に応じない姿勢を続ければ、核・ミサイル開発で一層の強硬策を取りかねない」と懸念する。

 市民にも驚きが広がった。広島市中区の平和記念公園を通り掛かった中区の会社員水廻拓さん(27)は「米国をけん制する狙いだろうが、刺激するだけで逆効果。国際社会は絶対に許してはいけない」と憤る。

 海上自衛隊呉基地がある呉市の主婦三十日(みとおか)敏江さん(59)は「自衛隊に守られている安心感がある半面、標的にもなりかねない。複雑な気持ち」と明かす。岩国市の税理士大土井秀樹さん(62)は「ミサイル発射に続き、北朝鮮はどこに向かっているのか分からない。岩国の米軍基地も標的になるのか」と不安を隠さない。

 三次市の高校1年平石萌恵さん(15)は「グアムへのミサイル発射計画は広島上空も予告ルート。米国と北朝鮮のけんかに巻き込まれているようで、いいかげんにしてほしい」とあきれる。福山市神辺町の農業奥野隆継さん(47)は「近隣国と連携して平和的に解決して」と慎重な対応を求めた。

 中国地方唯一の原発が立地する松江市。同市の中学校教諭園山貴之さん(33)=同市=は「有事の際の危機管理をしっかりしてほしい」と訴えた。

(2017年9月4日朝刊掲載)

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