×

社説・コラム

天風録 『島根じゃ意味がない』

 人口は七十万、神様は八百万(やおよろず)―。過疎を逆手に取った地元の島根県お得意の自虐カレンダーに倣おうとしたのだろうか。おととい広島市内であった自民党の会合での竹下亘総務会長の発言である▲「広島はまだ人口がいるけど、島根に落ちても何の意味もない」。グアム沖を狙うミサイルが島根や広島の上空を通過するとの北朝鮮の予告に触れて、そう述べた。何が言いたかったのか、言葉足らずでは誤解を招く▲「戦略的に考えれば島根が狙われるようなことはないという意味だ」と弁明したが、相次ぐミサイル発射で北朝鮮への脅威が高まっているさなか。6回目の核実験を強行した日でもあった。標的になるとの指摘もある原発には目配りせず、軽率な発言だったと言われても仕方なかろう▲東日本大震災の被害が「東北で、あっちの方で良かった」と言い放った元復興相を思い出す。共通するのは人口が多い少ないという物差しだ。それだけで地域の価値は見極められまいに▲島根県民はどう受け止めているのだろう。発言を撤回しないのなら、「島根はミサイルなんか飛んでこない安全な土地です」と宣言してはどうか。例のカレンダーには採用してもらえまいが。

(2017年9月5日朝刊掲載)

年別アーカイブ