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社説・コラム

社説 安保理緊急会合 武力行使なき包囲網を

 6回目の核実験を強行した北朝鮮を巡って国連安全保障理事会は緊急会合を開催し、新たな制裁決議案をまとめる協議に入っている。北朝鮮の核は世界全体の脅威であるとの認識を深め、暴発を抑え込む包囲網を築かなければなるまい。

 韓国情報機関によると、北朝鮮は9日にも、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を通常角度で発射し、日本上空を通過させるという。国際社会との溝をさらに広げる行いであり、直ちに準備を中止すべきである。

 安保理の議題の核心は日米が求める石油禁輸だ。北朝鮮の繊維製品の輸出制限や出稼ぎ労働者の派遣制限なども新たな制裁対象として検討されているとみられる。さらにトランプ米大統領は「北朝鮮とビジネスをする全ての国との貿易停止を検討している」と新たに表明した。

 全てが実行に移されれば、金(キム)正恩(ジョンウン)政権にとって大きな打撃である。ここまでの事態を招いた責任は、まずもって金政権にあると言わざるを得ない。

 特に石油禁輸は北朝鮮の経済と国民生活に少なからぬ影響を与えるだろう。朝鮮半島の混乱を避けたい中国やロシアは反発する姿勢を見せている。

 「北朝鮮とビジネスをする全ての国」には中ロも含まれているに違いない。この新たな制裁措置も反発を招きかねないが、事態打開には「小異を捨てて大同につく」構えで、関係各国は合意へ歩み寄るべきだ。

 トランプ政権にはぶれない外交姿勢を求めたい。従来は「レッドライン(越えてはならない一線)」をほのめかして金政権との対話路線を掲げていたが、弾道ミサイルの日本上空通過を経て強硬姿勢に転じた。6回目の核実験後は軍事行動を示唆しているのが気に掛かる。

 ヘイリー国連大使はおとといの安保理の演説で「米国は戦争をしたくない。だが忍耐には限度がある。私たちは同盟国と自国を防衛する」と述べた。影響力が大きいだけに、慎重な物言いに努めてもらいたい。米国による北朝鮮への先制攻撃は考えられないシナリオとはいえ、挑発に乗ってはならない。

 一方で米韓は、韓国軍が保有する弾道ミサイルの能力を高めるため、両国の指針で定める弾頭重量制限を解除することで合意した。北朝鮮の軍事関連施設への攻撃能力を高める狙いがあるようだ。米軍の最新鋭迎撃システム・高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国内への追加配備も近く行うという。

 さらに韓国高官の間で、1991年に在韓米軍から撤去されたとみられる戦術核兵器の再配備の検討が必要だという発言も出ている。朝鮮半島の非核化を実現する韓国の原則に変わりはないとして発言は打ち消されているようだが、このように核を容認する空気が生まれていること自体を強く危惧する。

 米国内では核保有国として認めることを北朝鮮への見返りとして問題を解決しようとする向きもあるやに聞く。あるいは、韓国や日本の核武装を促す議論も浮上しているが、私たちとしては到底受け入れられない。

 被爆地、被爆国としては「朝鮮半島の非核化」は譲れない。それを前提とした上で、制裁強化と対話による平和的解決で金政権の「核強国」へのもくろみを打ち砕くしかあるまい。

(2017年9月6日朝刊掲載)

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