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[インサイド] 北朝鮮ミサイル 中国地方名指し 混乱防止と安全 各機関ジレンマ

 北朝鮮情勢が緊張を増す中、米領グアム沖への弾道ミサイル発射時に上空通過を名指しされた中国地方で、各機関が手探りの備えを強いられている。北朝鮮の建国記念日(9日)に発射される可能性も報じられ、住民だけでなく職員にも警戒を呼び掛ける自治体も。各県警などは落下物を想定した対応を確認しているが、現場からは「何が起こるか分からない」と戸惑いや不安の声が上がる。

 グアム沖へのミサイル発射時の経路とされる広島、島根両県。島根県は、先の全国瞬時警報システム(Jアラート)の情報伝達訓練であった不具合を修正した。朝鮮半島に近い島根県隠岐の島町では6日、避難訓練を実施。広島県も近く庁内の対応訓練を予定している。山口、岡山、鳥取の各県も市町村に対し情報伝達の徹底を求めている。

9日視野に警戒

 市町村も9日の発射を視野に警戒を強めている。東広島市は8日に防災メールなどで住民に注意を促す予定。6月に広島県内初の避難訓練をした福山市は、3日の北朝鮮の核実験後、あらためてラジオで住民に避難行動の確認を呼び掛けた。

 海上自衛隊呉基地がある呉市。職員に対し、迅速な避難行動を率先して取ると同時に市民への周知も求めた。松江市は地震時の対応を参考にJアラート作動時の職員態勢を固めた。広島市も警報が鳴れば危機管理室の全34人で情報収集に当たる。担当者は「発射されるかどうか分からない中、市民を混乱させてもいけない」とジレンマも口にした。

運転見合わせも

 JRやアストラムラインなどの交通機関は、Jアラートが鳴った場合、運転を見合わせる構えだ。JR西日本広島支社は、走行中の列車もすぐに止め、乗客を安全な場所へ誘導。同支社総務課は「乗客を速やかに避難させる態勢は整っている」。広島港発着のフェリーや広島空港の空の便は、状況に応じて運航を見合わせるかどうか判断する。

 実際にミサイルが上空を通過したら―。広島県警は、110番や巡回などを通じて被害情報を収集し、落下物があった場合、負傷者の救護とともに被害拡大を防ぐため周辺の立ち入り規制などをする。第6管区海上保安本部(広島市南区)は、海に不審な落下物や浮遊物を目撃した場合、近づかずに連絡するよう求めている。

 米海兵隊岩国基地を抱える岩国市の福田良彦市長は、5日の市議会本会議の答弁で「北朝鮮の動向は予測不能。不安をあおらず、さまざまな対処法の検討を国に促す」と強調した。

(2017年9月7日朝刊掲載)

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