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オスプレイ 岩国に到着 緊急着陸機 大分での整備完了

 民間専用の大分空港(大分県国東市)に8月29日に緊急着陸した米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイは8日午前、エンジンの整備を終えて同空港を離陸し、約15分後に約86キロ離れた岩国市の米海兵隊岩国基地に到着した。海兵隊によると、本格飛行前に行うとしていた試験飛行を兼ねている。同市や山口県は中国四国防衛局などに対し、機体整備や安全点検の徹底を要請した。

 緊急着陸から10日ぶり。オスプレイは左右両エンジンの全部または一部を交換したほか、7日にはさらに整備が必要だとして離陸を延期しており、深刻なトラブルだった可能性もある。

 海兵隊によると機体は岩国基地到着後、可能な限り早い時期に、所属する米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に戻る。大分県は再度の緊急着陸を警戒し、この機体が普天間飛行場に戻るまで、引き続き情報提供するよう防衛省に求めた。

 オスプレイは午前10時35分ごろ、大分空港を離陸。約15分後に岩国基地上空に現れた。基地南側から進入し、滑走路上空で旋回して向きを変え、同51分に着陸した。その後、駐機場へ移動し、米軍関係者が機体を確認するなどしていた。

 小野寺五典防衛相は8日の記者会見で「今回の整備について心配する方も多い。飛行の安全に万全を期すよう、これからも米側に求めていく」と述べた。

 岩国市と山口県は防衛局に対し、万全な安全対策とともに、市街地上空を飛行しないなど日米合同委員会の合意事項の順守を米側に求めるよう要請した。

 同市の福田良彦市長は午前10時すぎから、岩国基地で米海兵隊太平洋基地(沖縄県)のポール・ロック司令官たちと面会。その後の報道陣の取材に「当該機はもちろん、安全点検の徹底と万全の対策を講じるよう強く要請した」と述べた。

 一方で市民団体は反発。この日、滑走路を見渡す基地北側の堤防道路には報道陣や市民が詰め掛け、オスプレイ飛来の様子を注視した。飛行中止を求めてきた市民団体「住民投票を力にする会」の松田一志代表は「緊急着陸などのトラブルを巡る国や米軍の情報提供が不十分。安全性への疑問は拭えない」と憤った。

地位協定で「お墨付き」 米軍機 国内空港 自在に飛行

 垂直離着陸輸送機オスプレイは2012年10月に米軍普天間飛行場に配備されて以降、米海兵隊岩国基地など国内の米軍基地へ頻繁に飛来している。安全面への懸念から沖縄県などが飛行自粛を求める中、なぜ民間空港を含めて自由に行き来できるのか。背景には、米軍機の運用を日本側が制限できない「日米地位協定」の壁がある。

 「通常の飛行に問題ないと判断した場合、岩国基地へ向かう」。岩国市へ中国四国防衛局からオスプレイの飛来情報があったのは、8日午前10時25分。大分空港を離陸する約10分前だった。その後、30分足らずで岩国へ到着した。

 大分県も離陸3分前の同10時32分、九州防衛局から同じ情報を受けた。同県は8月29日の緊急着陸後、職員を現地派遣し情報収集してきたが、「離陸直前まで岩国へ向かうとの情報提供はなかった」という。

 オスプレイは国内配備前から事故が相次いだため、各地の防衛局職員が米軍基地での運用状況を目視で確認するなどし、関係自治体へ情報提供している。ただ、飛行目的や訓練内容について不明な点も多い。

 一方、国内であっても日本側にオスプレイを含む米軍機の飛行を制限する権限はない。日米地位協定では、基地や民間空港への米軍機の出入りを認めており、同協定に基づく航空特例法で国土交通省への飛行計画の通報義務も適用除外。事実上、国内の飛行場を自由に行き来できる。

 とりわけ岩国基地は滑走路に加え大型船が接岸できる港があるため、オスプレイの普天間配備前の12年7月に機体の陸揚げ地となり、試験飛行も実施。普天間から他基地へ向かう際の主な中継地となっている。

 大分空港から飛来した当該機について、中国四国防衛局は現地で確認を続ける予定だ。ただ、具体的な離陸時期は「米軍の運用に関わるので分からない」としている。(和多正憲)

(2017年9月9日朝刊掲載)

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