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連載・特集

[ヒロシマは問う 北朝鮮核開発] 被爆者の元原爆資料館長 原田浩さん(78)

悲惨な体験繰り返すな

―北朝鮮の核・ミサイル開発をどう受け止めていますか。
 戦後、これまでにない危機を感じている。北朝鮮は核兵器を保有して自らを守るしかないという論理なのだろう。まさか攻撃に踏み切らないだろうという空気があるが、ひとたび核が落ちたら対応しようがない。

  ―核兵器廃絶と恒久平和を訴えてきたヒロシマの役割を今、どう考えますか。
 ヒロシマは、人類史上例のない悲惨な体験をした世界で最初の都市。核兵器の使用がどんな結果をもたらすのかを知っている。北朝鮮に対しては国交がなく、困難ではあるが、ヒロシマの体験を決して繰り返してはならないと伝え続けるのに尽きる。

  ―核兵器の非人道性に国際的な理解が広がり、禁止条約が制定されたのは、北朝鮮に核放棄を迫る好機になりませんか。
 唯一の被爆国である日本政府が条約に参加するのが、大きなインパクトになるのではないか。米国の「核の傘」の下にあってそう行動しても矛盾しないはずだ。なのに、(北朝鮮の核実験を受けて)政権与党の政治家が日本国内への米軍核兵器の配備論に言及するなど、被爆体験に理解のない発言もあった。被爆地と政府の思いに大きな乖離(かいり)を感じている。

 各国による核兵器禁止条約の制定交渉を非政府組織(NGO)が支えたように北朝鮮問題でも、市民、世論がもっと動かなければならない。例えば、平和首長会議の加盟自治体が住民の世論を高めるような仕掛けを考えるのも、広島市の平和行政に必要ではないか。

  ―被爆者が高齢化する中、ヒロシマの訴えをどう発信し続けますか。
 被爆体験を聞き、原爆資料館で悲惨な状況を見れば、核兵器が人類に何をもたらすかが分かるはずだ。全ての世代が、被爆者の体験と、平和への思いを担う時代になっている。(野田華奈子)

    ◇

 北朝鮮による相次ぐミサイル発射や核実験で、かつてない不安が日本の社会を覆っている。核兵器の廃絶と世界の恒久平和を訴えてきたヒロシマの立場から、どう、この問題に向き合えばいいのか。被爆者や有識者に聞く。

はらだ・ひろし
 1939年、広島市南区生まれ。6歳の時、爆心地から2キロの広島駅で被爆した。63年に市職員。93年4月~97年3月、原爆資料館長を務めた。

(2017年9月12日朝刊掲載)

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