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オスプレイ試験飛行 2首長 スタンス不明瞭

 岩国市の米海兵隊岩国基地での垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの試験飛行に関する山本繁太郎山口県知事と福田良彦市長のスタンスが不明瞭だ。ともに住民不安を理由に「容認できない」と繰り返す一方、踏み込んだ抗議もせず飛行を前提で運用に注文を付けている。事実上の「追認」ともいえる対応は、住民への配慮と国防への協力姿勢の間で揺れる苦悩とも取れるが、矛盾にも映る言動には批判も出ている。(金刺大五)

苦肉の言動 評価分かれる

 飛行開始方針が国から伝達された翌20日の岩国市議会の本会議。「苦渋の決断で認めたのか」という市議の問い掛けに、福田市長は「(森本敏防衛相に)飛行は認められないと明確に伝えた。しかし現実から目を背けるわけにもいかない」と答弁した。日米合同委員会合意の順守や恒常的な配備反対などを国に求めたことを強調し、理解を求めた。

 山本知事も24日の県議会代表質問の答弁で試験飛行開始を「誠に遺憾」と強調。一方、国の安全宣言に基づく訓練であり、全責任を国が負うよう訴えた。

 オスプレイは安全性確認前の陸揚げに強く抗議した県市の意向に反し、7月に強行搬入された。二井関成知事(当時)は試験飛行を始める際の安全性の確認について「地元自治体が納得できる説明」を筆頭に5項目を国に提示していた。

 結局「住民の不安は拭えていない」とする地元の意向は無視された形で飛行は強行されたが、山本知事は国への抗議については「既に県の考えは伝えている」と否定的だ。

 「飛行開始を容認するのは(地元ではなく)日本政府」と明言する森本防衛相は、度々の来訪を広く意見や要望を聞く機会と位置付ける。これに対し、配備先の普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)を抱える仲井真弘多(なかいまひろかず)沖縄県知事は「断固反対」の姿勢を見せる。

 対照的に山本知事は国防、国の説明姿勢へ理解を示し、友好的だ。山本知事は「米軍の運用を地方自治体が止めることは事実上、不可能。飛行が始まった以上、県民の安心安全確保が最優先」と現実的対応を強調する。

 ただ、県議会内でも「国の方針に追随しているだけ」「県民の不安を代弁している」と評価は分かれている。

 岩国基地では2014年までに米海軍厚木基地(神奈川県)から艦載機59機の移転が日米合意で計画されている。山本知事と福田市長は普天間移設の見通しが立たない間の先行移転は認めず、現時点での計画は容認していないとする。

 しかし、沖縄の現状に加え、先行搬入、試験飛行と2度も「米軍の運用を止められなかった」現実は、なし崩し的な3度目の強行にもつながりかねない。

 「アリバイ行脚」とも皮肉られる防衛相の自治体訪問に対し、知事と市長の抗議姿勢が単なるポーズなのか否か。両首長が掲げる「国に物言う姿勢」の真価が問われる。

オスプレイの試験飛行
 米軍が7月23日に12機を米海兵隊岩国基地に搬入。日本政府は事故調査や日米合同委員会による安全確保策の合意を経て今月19日に「安全宣言」を出し、米軍が21日から基地で開始した。近く普天間飛行場に配備される予定だが、沖縄側の反発は強い。

(2012年9月29日朝刊掲載)

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