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毒ガス症例 11月に図説集 広島大とイランの医師 両国で出版

 広島大の研究者が、イランの医師たちの協力を受け、両国の毒ガス被害者の症例を図説集にまとめた。広島大の研究者が大久野島(竹原市)にあった毒ガス製造工場の関係者の治療を通して蓄えてきた知見を生かし、イラン・イラク戦争(1980~88年)の被害者を支援してきた活動の集大成で、11月に両国で出版される。

 題名は「マスタードガス傷害アトラス」でA4判、316ページ。日本語、ペルシャ語、英語を併記している。両国でいまなお、人々を苦しめるマスタードガスによる症例のほか、ガスの歴史や性質、交流の歩みを収めた。

 爆弾で一度に大量の毒ガスを浴びたイランの被害者には、皮膚や目の障害が目立つ一方、毒ガスに少しずつ長期間さらされた大久野島の工場作業員は、肺などのがんに侵されるケースが多いとの比較も紹介。共同研究の成果を盛り込んだ。

 広島大を中心に島根大、県立広島病院、イランの医療機関の計25人が執筆。広島大の井内康輝名誉教授(64)がまとめた。1200部を作製。うち600部を10月1日に在日本イラン大使館(東京)に届ける。両国の医療機関や平和団体に配る。

 イランの毒ガス被害者を広島に招いている広島市東区のNPO法人モーストの会の働き掛けで、広島側の医師が2005年からイランを訪れ、現地の医師と専門的な連携を深めてきた。

 井内名誉教授は「専門知識のない人にも読めるよう内容をかみくだいた。被害者支援につなげたい」と話している。(教蓮孝匡)

(2012年9月29日朝刊掲載)

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