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社説・コラム

永田町発 米軍核の日本配備提起の意図は 自民党元幹事長 石破茂氏(鳥取1区)

「核の傘」の実効性議論を 被爆国 保有は非現実的

 米軍の核兵器を日本に配備することの是非を検討するよう提起した自民党の石破茂元幹事長(鳥取1区)の発言に、被爆者たちから批判が相次いでいる。日本の非核三原則(核を持たず、つくらず、持ち込ませず)や、「核なき世界」づくりの否定につながると見るためだ。石破氏に発言の意図などを尋ねた。(野崎建一郎)

  ―核兵器の国内配備検討に言及した理由は。
 北朝鮮は、水爆と大陸間弾道ミサイル(ICBM)を持った可能性がある。日本の国民の生命、財産を守る方法を考えるなら、「核の傘」の実効性を検証しなければいけない。北朝鮮への抑止力が高まる可能性があるなら、配備についても議論した方がいい。

  ―核廃絶を願う市民や被爆者は、非核三原則を破る考えだと反発しています。
 覚悟の上だ。嫌われても、核の脅威から日本を守るのが政治家の責任だ。

 日本の安全保障は、米国の核抑止力の下で成り立っている現実がある。それを踏まえて冷戦期の欧州の歴史を振り返ってほしい。旧ソ連による核兵器の脅威にさらされた英国や旧西ドイツは、核の保有、配備に踏み切った。冷戦期に大戦がなかったのは、核軍事力による「恐怖の均衡」があったからだ。

  ―核兵器廃絶や核不拡散を目指してきた日本政府の歩みと逆行しませんか。
 私も核廃絶はしないといけないと考えている。ただ、廃絶を訴えれば、北朝鮮が核兵器を使わないという保証はない。現実の国防を考えるなら、「核の傘」がいつ、どのように機能するか確かめておくべきだ。

  ―日本は「核の傘」を出て、アジアの非核化などを先導するべきだとの意見が平和団体などにあります。
 核抑止力に頼らずに、北朝鮮の脅威を防ぐ試みは、いわば「賭け」だ。政治家は、より実効性の高い方を選ばざるを得ない。

  ―各国が抑止力の均衡を前提に外交を進めれば、核兵器を含む軍事力の拡大競争に歯止めがかからなくなるのではありませんか。
 軍備は、パワーのバランスが取れていれば、拡張しても抑止につながるので問題ない。核兵器については、核拡散防止条約(NPT)の枠組みがある。

  ―非核三原則が崩れれば、なし崩し的に日本の核武装が議論されるのではないかとの懸念もあります。
 欧州では、核を配備しても、核保有の議論にならなかった国がある。他国の核政策も検証すべきだ。そもそも被爆国の日本はNPTを脱退しないだろうし、地下核実験をする場所もない。核保有は非現実的だ。

  ―日本はどう核廃絶を進めるべきだと考えますか。
 核兵器を持っても意味がないと相手国に知らしめる「拒否的抑止力」の向上が一番の近道だ。そのため多額の資金をつぎ込みミサイル防衛の整備をしてきた。ただ、完全に核ミサイルを撃ち落とす技術を確立するにはあと10年はかかる。今は核抑止の実効性を日本政府が確信することが大事だ。

(2017年9月18日朝刊掲載)

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