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オバマ氏に広島訪問を要請 被爆者7団体

■記者 森田裕美

 オバマ次期米大統領が就任式を迎える今月20日に合わせ、2つの広島県被団協など広島の被爆者7団体が、核超大国の新たなリーダーに被爆地を訪問するよう促す共同の書簡を送ることを決めた。新大統領就任時に組織の枠を超えて共同でメッセージを送るのは初の試みとなる。

 日本被団協の代表委員でもある坪井直・県被団協理事長(83)が他団体の代表に提案した。近く各代表で最終的な文案を協議する。

 書簡では、広島訪問を呼び掛け、被爆者の声に直接、耳を傾けることや原爆資料館の視察で被爆の実情に触れるよう求める。さらに、2010年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議をリーダーシップを取って成功させることなど、新政権への具体的な政策も要請する方向だ。

 原爆投下を決断したトルーマン以降の米大統領は計11人。現職で被爆地に立った大統領はまだいない。米国の現職要人として訪れたのは、昨年9月に広島市で開催された主要国(G8)下院議長会議(議長サミット)に出席したナンシー・ペロシ下院議長が、過去最高レベルとなる。

 オバマ氏はブッシュ大統領が核軍縮には消極的だったのに対し、「究極的には廃絶を目指す」との姿勢を示し、大統領選を前に民主党の政策綱領にも明記した。ブッシュ政権が拒んだ包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准など、核軍縮に前向きな姿勢を表明している。

 このため、11月の大統領選でオバマ氏が圧勝したことで、被爆地では超大国の核政策の変化に対する期待感が高まっている。一方で、オバマ氏は「他国が核兵器を持つ限り、強力な核抑止力は維持する」とも明言する。

 坪井理事長は、初の黒人大統領となるオバマ氏の演説や著書を読んだ。「人種差別などの経験から人間の痛みが分かる人と感じる。広島に来ることで、国家の駆け引きではなく人間の命を尊重する立場から、米国の核政策を進めてくれると信じる」と話している。

(2009年1月4日朝刊掲載)

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