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[変わる岩国基地] 野球場利用いつから? 地位協定背景 手続き複雑

 米海兵隊岩国基地(岩国市)へ空母艦載機が移転する計画に伴い、国が同市愛宕山地区に整備した野球場エリアの使用が、完成から2カ月近くたっても始まっていない。市へは「いつから使えるのか」との問い合わせも寄せられるが、市は具体的な時期を示せないでいる。背景には、日米地位協定に絡む国と米軍との複雑な手続きがある。

 野球場「キズナスタジアム」は両翼100メートル、センター122メートルで、観客約8千人を収容可能。エリアにはソフトボール場2面、バーベキュー施設を備えたあずまや8カ所などもある。7月末に完成したが、出入り口は現在もコーン標識が並べられ、関係者以外は立ち入れない。

 野球場のほか陸上競技場などが建設される愛宕山地区の関係施設は、米軍と市民の共同使用を前提とした国内初の運動施設。その利用にはまず、米軍への施設提供が必要となる。野球場エリアについて日米両政府は8月24日の日米合同委員会で、同地区の米軍家族住宅262戸とともに米軍への提供に合意。今後、閣議決定や政府間協定を経て正式に提供される。

 共同使用を急ぎたい市は日米合同委合意の当日、中国四国防衛局長に早速、申請した。その根拠の一つが日米地位協定だ。「米軍が施設や区域を一時的に使用していない時は、日本政府は臨時に自ら使用、または国民に使用させることができる」などの規定があり、正式には「一時使用」と位置付けられる。

 共同使用も合同委合意を経て閣議決定、政府間協定の手順を踏む。これが済んで初めて同防衛局長が共同使用を許可し、局長立ち会いの下、市長と基地司令官が現地実施協定を締結。最終的な手続きとして利用方法や使用料を定めた市管理条例の制定が必要で、市議会への提案は11月の臨時会となる可能性がある。

 ただ、今後のスケジュールは米軍と防衛省などの協議次第で、急浮上した衆院解散の動きが及ぼす影響も見通せない。市は「活発な日米交流が実現し、市民に喜んでもらえる施設になると考えている。相手があることだが、一日も早く使用できるよう努力したい」としている。(松本恭治)

(2017年9月22日朝刊掲載)

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