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毎月6日にバーで被爆証言を聞く集い 今月で丸3年

■記者 森田裕美

 広島市中区薬研堀でバーを経営する冨恵洋次郎さん(29)が、毎月6日に開いている被爆証言を聞く集いが、今月で丸3年になる。肩ひじ張らない継承の場として、招かれる被爆者、耳を傾ける若い世代の双方に共感が広がっている。

 この3年、バーの常連客や評判を聞いて訪れた若者らが毎回10-20人参加し、招いた被爆者も36人。昨年12月は、いつもの店から冨恵さんが経営する呉市安浦町の海辺のカフェに舞台を移した。冨恵さんにとって、初の試みとなる昼間の平和イベントだ。

 県内外から集まった約40人を前に、8歳で被爆した岡田恵美子さん(71)=東区=が切々と語った。建物疎開に出かけて行方不明の姉を思う悲しみ、核兵器が拡散する世界情勢へのはがゆさ…。

 友人と参加し、被爆者の話を初めて直接聞いた東広島市の会社員土居計介さん(30)は「取っつきやすく原爆について関心を持てるようになった」。岡田さんも「1回限りでない地道さにこちらも励まされている。未来に希望が持てる」と集いに思いを託した。

 冨恵さんが集会を始めたのは、生まれ育った広島について尋ねられた際、原爆についてきちんと説明できなかった経験からだ。集いが軌道に乗った3年目。「せっかく聞かせてもらったのに自分で発信しないのはもったいない」と自らも原爆資料館で案内ボランティアを始めた。

 「より説得力を持って伝える力を」。これからも集いを続ける決意を新たにしている。

(2009年1月6日朝刊掲載)

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