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非人道性 ともに考える 南アで初の原爆展 NPOの渡部理事長 講演や植樹で交流

 南アフリカ共和国では初となる原爆展が、主要都市のヨハネスブルクとケープタウンで15日まで開かれた。ともにナチスによるユダヤ人虐殺(ホロコースト)やアフリカでの人権問題を伝える教育施設、ホロコーストセンターが会場。広島のNPO法人ANT-Hiroshimaの渡部朋子理事長(63)が現地を訪れた。(金崎由美)

 原爆展は各都市のホロコーストセンターとプレトリア大の主催。国際協力機構(JICA)中国国際センターに勤務経験があり、現在はJICA専門家として同大日本研究センターの運営支援に携わる川北知子さん(52)が尽力した。

 広島市の原爆資料館から写真パネルなどの提供を受けた展示のタイトルは「原爆と人権」。渡部さんは開会行事の講演で原爆詩「生ましめんかな」を英語で朗読。被爆2世としての思いや親交のあった中沢啓治さんが「はだしのゲン」に込めた訴えを語った。

 南アフリカには、19世紀のダイヤモンド取引で移住したり、20世紀の欧州各地での迫害を逃れてきたりしたユダヤ人が数万人住むという。川北さんは「ホロコーストと原爆はともに計算の上で効率的に被害を出すことを追求した結果。非人道性について皆で考える場になった」と振り返る。

 渡部さんは現地の植物園の協力を得て被爆樹木の種から芽吹いた苗木を育ててもらっており、ケープタウンの会場ではホロコースト生存者ミリアム・リヒテマンさん(96)と一緒にイチョウを植樹した。

 かつて原爆開発を進めた南アは核計画放棄のモデルケースとされ、今月20日に署名が始まった核兵器禁止条約の実現でも先頭に立った。渡部さんは「南アの人たちと平和への思いを共有するとともに、禁止条約への感謝を伝える機会も得た」と喜んでいる。

(2017年9月25日朝刊掲載)

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