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重度白内障 500ミリシーベルト境にリスク増 許容基準変わる

 放射線を目の水晶体に浴び、重い白内障を発症するリスクは500ミリシーベルトを境に高まることが、放射線影響研究所(広島市南区、放影研)の被爆者の健康調査を基にした研究で分かった。視力低下を伴う重度の白内障を引き起こす被曝(ひばく)線量の境目の値(しきい値)に関する詳細なデータはこれまでなく、国際放射線防護委員会(ICRP)の基準強化につながった。(田中美千子)

 放影研は1986年以降に2年に1度、健康診断を受けた被爆者6066人を対象に調査。このうち2005年までに白内障の手術を受けた1028人について、症状と被爆当時の放射線量、年齢などを解析した。

 ほとんど放射線の影響を受けていないとみられる被爆者と比較した結果、発症との明らかな因果関係は500ミリシーベルトを上回ると確認できた。例えば、1シーベルトを浴びた場合、千人当たりでは30年間で重度の白内障になる人が約100人多くなると想定されるという。

 これらの研究の途中経過を踏まえ、ICRPは昨年4月、急性被曝時の水晶体の最大許容線量をそれまでの5シーベルトから、10分の1の500ミリシーベルトまで大幅に引き下げた。

 放影研は、米学会誌の8月号に研究結果を発表した。広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)の神谷研二所長(放射線障害医学)は「重度白内障への放射線影響の詳細なデータが得られたのは初めて。放射線防護の観点から意義深い」と評価している。

(2012年10月2日朝刊掲載)

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