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北朝鮮在住被爆者 国交なく手帳取得審査受けられず

■記者 森田裕美

 北朝鮮在住の被爆者が、海外からの被爆者健康手帳の取得申請を可能とした被爆者援護法の改正後も宙に浮いた状態となっている。日本と国交がないためで、審査をする広島市に対して在日本朝鮮人被爆者連絡協議会の李実根(リシルグン)会長(78)=同市西区=が代理申請の窓口役になると申し出るなど、民間レベルで支援の動きが出始めた。

 海外からの手帳申請は、日本の在外公館が窓口となる。国交のない台湾では実質的な外交窓口である財団法人交流協会がその役割を果たす。ただ、北朝鮮については厚生労働省から具体的な方針は示されていない。北朝鮮をたびたび訪問している李会長は昨年12月、市原爆被害対策部に「窓口がないなら、私がメッセンジャーになる」と申し出た。

 北朝鮮には「反核平和のための朝鮮被爆者協会」という組織がある。原水禁国民会議などの「在朝被爆者支援連絡会」が入手した同協会の報告によると、2007年末時点で生存する被爆者は382人。その大半は手帳を所持していない。

 市によると、李会長を仲介した北朝鮮からの代理申請は可能という。しかし、広島と長崎の両県市が担当する審査がハードルとなる。北朝鮮の国内事情から日本からの本人確認の電話連絡は困難。北朝鮮への制裁措置の一つとして公用による公務員の渡航は原則禁止で、市職員が現地に赴き面談することも現段階では不可能だ。

 広島市の中村明己認定担当課長は「人道的見地から例外を認めるなど、国に配慮を求めたい」と話す。李会長は「外交の高い壁を一気に越えるのは無理でもできることから一歩一歩前に進めたい」と今年も要望を続ける。

北朝鮮の被爆者
 広島・長崎で被爆後、帰国した人たちで、1989年に李会長が初めて被爆者の生存を確認し、支援を訴え続けてきた。日本政府は2001年3月、初の調査団を北朝鮮に派遣したが、その後、拉致や核問題などもあって具体的な支援にはつながっていない。

(2009年1月6日朝刊掲載)

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