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公有水面埋め立て免許 6日期限切れ 中電、上関原発推進を強化

 山口県上関町への原発建設計画で、中国電力が県から交付された予定地の公有水面埋め立て免許の期限切れが6日に迫った。原発新設を否定する政府方針に加え、山本繁太郎知事も延長を認めない意向を示すなど、上関原発の実現は厳しい状況だ。しかし、中電はここにきて計画推進の動きを強め、反対派は延長申請を強行するのではと警戒している。


「重要さは不変」

 「状況も町民の意識も変わってきているのに旧態依然。原発建設は地元との『共生』ではなく中電の『強制』だ」。広島市中区の中電本社に1日、延長申請の見送りなどを申し入れた「長島の自然を守る会」の高島美登里代表は申し入れ後に憤った口調で話した。

 対応した中電広報部門の松岡良典マネージャー(地域共生担当)は「上関の重要性は変わらない」と建設推進の立場をあらためて強調。申請するかしないかは明言を避けたが「期限までにはお示ししたい」と説明した。

 政府は9月14日、原発ゼロを明記したエネルギー戦略を決定。閣議決定は事実上見送ったものの、枝野幸男経済産業相は本体着工前の原発新増設は行わないと繰り返している。

 中電はこうした動きに対して上関原発推進を戦略決定の当初から主張。原発推進の立場に変更がないことを強調してきた。高島代表は「(延長申請は)まさかしないとは思うが…」と言いながら、ここにきての中電の積極姿勢が気になるという。

共存共栄を強調

 中電上関原発準備事務所は9月18日から21日にかけ、上関町内全戸の約1550戸に文書を配布した。「電力の安定供給に資する上関原発の断念は考えてない」と強調。政府のエネルギー戦略について光熱費の上昇や産業空洞化などの影響が大きいと指摘した。

 9月21日の町議会では、建設予定地がある同町四代地区で中電が町道を整備する計画も明らかになった。費用は数千万円。町内業者に発注するとみられ、中電が地元との「共存共栄」を堅持している姿勢を印象づけた。

 推進派町議でつくる原電推進議員会の右田勝会長は「ずっと国のエネルギー政策に協力し、地域振興にも期待してきた。そうした地元の思いをくんだのだろう」と中電の対応を評価する。

 ただ、山本知事は延長申請があっても認めない方針。免許が失効しても再申請は可能だが、右田会長は中電に「地元の意向を国に示す意味でも延長申請するべきだ」と求めている。(久保田剛)

(2012年10月4日朝刊掲載)

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