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10-11月にイランで初の原爆展 被爆証言も

■記者 岡田浩一

 核開発を続けて国際的孤立を深めるイランの首都テヘランで今年秋、被爆者が参加する初の本格的な原爆展が開かれる。広島市東区の特定非営利活動法人(NPO法人)が、現地の毒ガス被害者支援組織と連携し、原爆資料館(中区)の協力で実現。大量破壊兵器の廃絶を訴える。

 NPO法人は国際医療支援団体「モーストの会」(津谷静子理事長)。計画では原爆展は10、11月に2週間にわたってテヘラン・シティー公園内にあるテヘラン平和博物館で開く。

 被爆の惨状を伝えるパネルにペルシャ語訳の説明文を添えて展示。被爆者2人が体験を語り、記録映画を上映する。イラン政府要人も招くという。

 原爆資料館は、展示資料や広島市内の児童が描いた平和の絵の貸し出しと輸送、説明文のペルシャ語訳の監修などで後押しする。前田耕一郎館長は「核問題が関心を集めるイランの人々に、原爆の被害を知ってもらう意義は深い」と期待する。

 モーストの会の津谷理事長は2004年、広島国際文化財団が主催し、中国新聞社が協賛した広島世界平和ミッションの一員としてイランを訪問した。

 それをきっかけに、現地の「化学兵器被害者支援協会」と交流を開始。04年8月から毎年、イラン・イラク戦争(1980-88年)の毒ガス被害者を平和記念式典に招いている。テヘラン平和博物館は同支援協会が運営している。

 2年前にも原爆展の開催を検討したが、毒ガス被害者にイラクへの報復心や米国への敵対心が強いうえ、イラン政府から交流を制限される恐れもあり、見送った。

 今回の開催について津谷理事長は「長年の交流でイラン側に和解の心が芽生えてきたように思う。テヘラン市当局の信頼も得た今、踏み切った」と話している。

テヘラン平和博物館
 広島市の原爆資料館を訪れた毒ガス被害者たちが、体験継承の大切さを学び、帰国後にテヘラン市へ設置を要請。非政府組織(NGO)の化学兵器被害者支援協会がテヘラン市から施設の寄贈を受けて開いた。広島市から持ち帰った原爆被害の写真と、毒ガス被害の写真のパネルを展示している。今年秋の原爆展までに改修を終える。

(2009年1月5日朝刊掲載)

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