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上関原発計画 埋め立て免許延長申請 中電、推進姿勢示す

 中国電力は5日、山口県上関町で建設を目指している上関原発計画をめぐり、建設予定地の公有水面埋め立て免許の3年延長を県に申請した。免許期限は7日午前0時に迫っていた。政府は原発新増設を認めないエネルギー戦略を決めているが、中電は建設推進を望む地元上関町の意向や国が戦略の閣議決定を事実上見送った点などを踏まえ、「現状維持」の姿勢を示す必要があると判断した。(久保田剛、山田英和)

山口知事「不許可に」

 山口県の山本繁太郎知事はこれに対し、国のエネルギー政策での新規原発の位置付けや同原発の土地利用計画が不透明として、記者団に「申請は許可できない。不許可処分をすることになる」と明言した。

 県は手続き上、延長申請の審査に入るが通常は1カ月程度を要する見通し。県の審査結果が出るまでは免許は失効しないが、7日以降は工事はできなくなる。免許が失効した場合、中電は新たに免許を得る必要がある。しかし、福島第1原発の事故後、脱原発の世論は根強く、再取得のハードルは高いとみられる。埋め立て免許の期限は工事着手から3年間。

 中電上関原発準備事務所の吉富哲雄所長は申請について「個別の原発計画を国がどう進めるかは検討の途中と認識している。上関原発の必要性を考え、現状維持をしたい」と強調した。津波対策を強化した設計変更も同時に申請し、安全確保に努めながら建設を推進する姿勢を示した。

 山口県上関町の柏原重海町長は申請について「地元の意向や国のエネルギー政策を総合的に判断された」と表明した。

 計画では、同町長島の建設予定地約33万平方メートルのうち海上部分の約14万平方メートルを埋め立てる。県が2008年10月、中電に埋め立て免許を交付し、中電が09年10月に埋め立てに着手した。

 しかし、予定地の対岸約4キロの上関町祝島の住民らを中心に抗議行動が繰り返され、工事は停滞。福島第1原発事故後は県などの要請もあり工事を中断していた。

上関原発
 中国電力が山口県上関町に建設を計画する改良沸騰水型の軽水炉。1、2号機の出力はともに137万3千キロワット。建設費は約9千億円。2011年度の電力供給計画では1号機は12年6月の本体着工、18年3月の運転開始を目指していた。12年度計画では着工、運転開始とも未定に修正した。

【解説】 立地計画の地元に配慮

 中国電力による上関原発建設予定地の埋め立て免許の延長申請は、新設計画への強い意欲を地元に示す狙いがあるとみられる。ただ、世論が脱原発に大きく傾く中、原発ゼロを目指す政府方針に反し、新設を目指す動きに波紋が広がるのは必至だ。

 免許期限を迎える中、延長申請を見送れば、地元に「中電が計画の旗を降ろした」ととられかねない。原発立地に協力してきた地元への配慮と、計画推進を支えてもらう力を地域に維持したいとの思いもにじむ。

 政府は、原発の新増設を認めないとする新たなエネルギー戦略を決めたが、閣議決定を見送った。方針に基づけば、新設の上関原発は中止だ。一方で「不断の検証と見直し」も盛り込まれた。こうした政府方針のあいまいさを受け、将来の見直しも視野に計画推進の姿勢を強く示した面も否定できないだろう。

 しかし、国民の多くが脱原発依存を望んでいるのは間違いない。中電には、幅広い意見に耳を傾け、自らの原発計画をあらためて検証して見直し、理解を得るプロセスが欠かせない。(東海右佐衛門直柄)

(2012年10月6日朝刊掲載)

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