×

ニュース

被爆体験聞き取り進む 追悼祈念館 渡部さんら本年度8人

 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)が、高齢の被爆者に代わり被爆体験記を執筆するための聞き取りを進めている。13日は、基町(現中区)で被爆した渡部節子さん(93)=西区=を同館に招き、当時の惨状や思いを聞いた。

 渡部さんは21歳の時、勤務先の広島逓信局で被爆。同僚が「火を消さにゃあ」と建物に水を掛け続けて亡くなったことや、ガラス片でけがを負いながら燃える橋を渡って横川を目指し逃げたことなど、あの日の記憶を約2時間にわたり語った。「戦争だけは、核兵器だけは、絶対いけない」と訴えた。

 渡部さんから話を聞いた同館職員2人のうち、祖母が被爆者という嘱託職員清水愉樹さん(37)=西区=は「貴重な話を聞かせていただきありがたい」と感謝した。

 父の顕さん=故人=も被爆した石仏の写真を撮りためて作品集を自費出版するなど、3世代にわたって被爆に向き合っている。「悲惨な体験だけでなく、当時の時代背景や心情も含めて後世に伝えたい」と、形に残すことの大切さをかみしめる。

 2006年度に始まった代筆事業では、これまでに125人から聞き取った。本年度は渡部さんたち8人を予定し、来年3月までに体験記としてまとめ、館内で公開する。(野田華奈子)

(2017年10月15日朝刊掲載)

年別アーカイブ