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連載・特集

[選択 2017衆院選] 憲法論戦 かみ合わず 中国地方

与党 言及避ける傾向 野党 改正の賛否二分

 衆院選の大きな争点である憲法改正を巡り、中国地方の候補者の論戦がかみ合わない。9条への自衛隊明記を掲げる自民党の陣営は訴えを避けがちな一方、改憲に反対する野党は「改悪阻止」と繰り返す。自衛隊の拠点や被爆地を含む選挙区でも論戦に盛り上がりを欠いている。

 北朝鮮のミサイル発射に備え、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備された陸上自衛隊海田市駐屯地(広島県海田町)。近くのJR海田市駅前で13日、街頭演説に立った広島4区の自民党比例前職は憲法に触れなかった。

 16日、駐屯地前で日本維新の会元職がマイクを握った。安全保障政策の訴えにとどまり、党公約の「9条改正」に踏み込まなかった。

「考えいろいろ」

 4区では他に希望の党、共産党、無所属2人の4新人が立ち、計6人が争う。ただ、駐屯地そばで飲食店を営む男性は「憲法に関する演説はなかなか聞こえてこない」と言う。

 公約で明確に憲法改正を掲げた自民党。しかし、街頭や集会での訴えは影を潜める。海上自衛隊呉基地を抱える広島5区の前職、米海兵隊と海自の岩国基地がある山口2区の前職もほとんど触れない。被爆地のある広島1区の前職は公約をまとめた党政調会長だが、語らない。

 「憲法についてはいろいろな考えがあり、前面に出しにくい」。各陣営からそんな声が漏れる。

 公明党比例前職2人も、公示日の第一声で憲法に言及しなかった。

公約との「ずれ」

 一方の野党。希望の党や日本維新の会は改憲に前向きだ。ただ希望の党で、公約と候補者のスタンスに「ずれ」が見え始めた。

 合流する民進党出身者に「改憲支持」を迫った希望の党。公約に「9条を含め改正論議を進める」と掲げた。しかし、中国新聞社が広島県内7選挙区の全候補者に実施した政策アンケートで、同党候補者5人の回答は割れた。9条改正に賛成2人▽反対2人▽どちらとも言えない1人。

 「9条は変えない。議席を得て議論に参加し、方向が違えば出処進退を考える」。鳥取2区の希望の党元職は公示日後の集会で言い切った。民進党出身。これまでの主張との整合性について説明に追われる。

 これに対し、立憲民主党の候補者は「安全保障法制を前提とした9条改悪に反対」との立場を鮮明にする。共産党、社民党も「憲法を守る」と改憲勢力を批判する。

 報道各社の情勢調査では衆院選後、改憲に前向きな勢力が増える勢いだ。その中で憲法論議はかすむ。

 「任務から無事戻るのが当たり前と思っていたが、自衛隊は北朝鮮のミサイル発射に向き合う職業だと強く意識するようになった」。呉基地で夫が働く呉市内の30代女性は、活発な論戦を切実に求める。「憲法が改正されたら自衛隊はどう変わるのか、知りたい」

(2017年10月19日朝刊掲載)

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