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中電埋め立て延長申請 「いまさら」「当然」 上関 終わらぬ対立

 「何をいまさら…」。中国電力が山口県上関町の上関原発建設予定地の公有水面埋め立て免許延長を申請した5日、反対派には怒りの声が広がった。埋め立て工事にシーカヤックなどで抵抗してきた住民たちは申請書提出先の県柳井土木建築事務所に押しかけて抗議する一幕も。一方、推進派は「地元の意向に沿った行動」と中電の対応を評価した。(久保田剛)

 柳井市南町の県柳井総合庁舎の入り口。反対派のメンバーたち約10人が午前11時ごろから集まり、県柳井土木建築事務所に申請に訪れる中電社員を待ち構えた。

 午後3時ごろ、中電社員2人は、駆け付けた報道陣約30人や反対派に気付かれないままに申請書類を提出。提出を後で知った反対派のメンバーが「なぜ受理したのか」などと声を荒らげ、県職員に詰め寄る場面もあった。

 職員によると、1人はTシャツ、もう1人は作業服姿。中電上関原発準備事務所(山口県上関町)は「特別指示はしていない。庁舎内で混乱が起きるのは好ましくない」と説明したが、抗議した周南市のシーカヤックガイド原康司さん(40)は「堂々と申請すればいいのに。自らの立場だけを考え、強引に進めるやり方は福島第1原発事故後も全く変わらない」と憤った。

 上関原発を建てさせない祝島島民の会の清水敏保代表(57)は「推進派のためのポーズとしか思えない。30年間の苦しみや混乱をまだ続けさせるのか。いいかげんに決着をつけてほしい」とした。

 一方の推進派。この日は粛々と中電の動きを見守った。上関町議会の西哲夫副議長(65)は「国の方針がぶれており、やるべきことはやるべきだ。推進で長年取り組んできたわれわれとしては歓迎する」と評価した。

 上関町まちづくり連絡協議会の井上勝美顧問(68)も「現段階では申請は当然だろう」。ただ「福島の事故を受けて安全性に厳格な基準が設けられるのは間違いない。それに耐え得るしか新規建設はない」と話し、中電にいっそうの安全性確保を求めた。

計画堅持を強調 地元で中電

 中国電力の上関原発準備事務所の吉富哲雄所長は5日、計画予定地の公有水面埋め立て免許の延長申請について、事務所前で「現状を維持したい考えで申請した」と繰り返し、計画の堅持を主張した。

 申請の理由を「(個別の原発に対する)国の結論も出ていない段階。社として必要で重要な電源という考えは変わっていない」と強調した。

 免許権者の山口県の山本繁太郎知事は延長を認めない方針だが、吉富所長は申請を「強行ではない」と説明。安全性への県民の理解についても「丁寧に説明を尽くす。(理解は)得られると思う」として、津波対策として発電所の主要建物用地の地盤高を10メートルから15メートルへ5メートルかさ上げする設計変更などを示した。

 枝野幸男経済産業相が上関を含む原発の新設を認めない考えを表明したことについては「現時点の現状認識を述べたと思う」として政府の最終的な見解ではないという認識を示した。(金刺大五)

「上関やめろ」市民団体行進 中電前でも抗議

 広島市の市民グループ「さよなら原発ヒロシマの会」は5日、中区をデモ行進し、脱原発や再稼働反対をアピールした。中国電力本社前では、上関原発建設予定地の公有水面埋め立て免許の延長申請に反発の声を上げた。

 会のメンバーたち約130人が午後6時15分に市役所近くの公園を出発。中電本社前などで「上関原発建設やめろ」「延長申請ナンセンス」と叫びながら、平和大通りまでの約600メートルを20分かけて歩いた。

 東京の首相官邸前では毎週金曜、脱原発や再稼働反対を訴える抗議行動が続く。会は5日から、この抗議行動に合わせた定例のデモを開始。「ヒロシマ・アピールウオーク」と名付け、毎月第1、第3金曜の同時刻、同じコースを歩く。

(2012年10月6日朝刊掲載)

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