×

ニュース

原爆の慰霊碑記録明らかに 写真集「広島碑林」 著者が保管

 44年前に発行された広島市内の原爆犠牲者の慰霊碑を集めた写真集「広島碑林」が著者宅で約60冊保管されていたのが見つかり、遺族が県内の図書館などへ贈っている。風化して読みづらくなった碑文などの記録もあり、寄贈された施設は「貴重な郷土資料」と喜んでいる。(田中美千子)

 著者は2年前、100歳で亡くなった中区の染色家三田嘉一さん。1968年発行の写真集はB5判、129ページ。61の慰霊碑と原爆関連の彫像など28点の計89点を収録する。

 寄贈先の一つ、県立図書館(中区)は「慰霊碑の『基本書』。資料的価値は高い」(内田健二館長)と評価する。

 例えば、平和記念公園(同)の「相生橋趾碑」。現在は風化が進み漢文で書かれた碑文の判読は難しいが、写真集には読み下した全文を収録。修復して中区の広島城内から原爆ドームそばへ移された原民喜詩碑は、新旧の写真を掲載する。

 三田さんは召集先の中国で終戦を迎えた。シベリア抑留後、47年に古里の広島市に戻った。写真集の後記に「原爆供養に資せんとした」とつづる。

 写真集は、長女の後藤節子さん(77)=廿日市市=たち遺族が倉庫で見つけた。これまで公立図書館や学校などに約50冊を贈った。後藤さんは「父が思いを込めた写真集が今も誰かの役に立てばうれしい」と話している。

(2012年10月8日朝刊掲載)

年別アーカイブ