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オスプレイ配備完了 本土の関心 沖縄が注視

 米海兵隊岩国基地(岩国市)に先行搬入された垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機が配備先の普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)へ移動を終え、近く本格運用に入る。安全性への疑念が募る中、沖縄では「配備は差別」との声が高まる。同飛行場周辺などでは強い怒りが渦巻き、本土との温度差が広がっている。

 沖縄へ向けて飛び立つオスプレイに対し、岩国基地正門前などで十数人が抗議行動をした1日、普天間飛行場のゲート前では約400人が「配備撤回まで闘おう」と一斉に拳を振り上げた。その中には高齢者の姿も多く、「子や孫のため、自分はどうなってもいい」と語る男性もいた。

 戦後、全国の米軍基地の74%を押し付けられた沖縄。その上、世界各地で墜落事故が相次ぐオスプレイの配備だ。配備先は市街地の中にあり、「世界一危険」といわれる普天間飛行場。実際、2004年には同飛行場そばの沖縄国際大構内へ米軍ヘリが墜落する事故もあった。

 住民には、米兵の犯罪に対する恐怖感もある。1995年に起きた米兵3人による12歳少女への暴行事件は記憶に新しい。同飛行場ゲート前の座り込みに参加した主婦(61)は「少女時代、米軍車両を見ると暴行されるのが怖くて身を隠していた」と打ち明ける。

 オスプレイの本格運用後、飛行訓練が予定されている沖縄本島北部の東村高江で暮らす石原理絵さん(48)は、「沖縄への配備が完了したら、本土の人たちはまた『遠くで大変なことが起こっている』という従来の意識に戻る」と、ため息を漏らした。

 「日本は沖縄の人を人間扱いしていない。多数派のための手段として使ってきた」「多数決による民主主義のもと、沖縄が構造的差別を受ける構図ができている」。那覇市で9月26日にあったマスコミ関係者の懇談会で基調講演した大田昌秀元沖縄県知事も、本土の沖縄に対する意識をそう表現した。

 岩国基地に76日間とどまり、約千キロ離れた沖縄へと移動したオスプレイ。機体が岩国から消えたのは問題の終結ではなく、本格運用に向けた一つのステップだ。米軍は環境審査報告書で、オスプレイを毎月2、3日程度、岩国基地に飛来させ、全国6ルートでの低空飛行訓練を実施するとしている。

 オスプレイの岩国での飛行では、可能な限り飛ばないはずの住宅地からの目撃情報も寄せられ、全国に波及する光景の一端をうかがわせた。配備先の沖縄だけの問題とするか、全国の問題として問い直すか。一部地域へのしわ寄せのもとに維持されている安全保障、国防の在り方に一石を投じたともいえる。

 普天間飛行場ゲート前で9月28日にあった集会に参加した翁長雄志那覇市長は、取材に対し「オスプレイを岩国で受け入れ、全国で安保を考える契機にすればいい」と強調。それは、負担が限界を超えた現地から、いつまでも沖縄の現状を直視しようとしない本土全体に向けた悲痛な叫びだった。(大村隆)

(2012年10月9日朝刊掲載)

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